日射しが強くなって来ました。日の出が早くなり、朝5時を過ぎると気温も上昇へと向かいます。気温が高くなると植物はぐんぐんと生長を始めますが、それに伴い、利用する水の量も増えます。また、地面からの蒸発も増える時期です。植え替えや新規の移植など、新しく植物を植えたときには、水やりがかかせないのですが、面積が多くなると手動での水やりが辛くなったり、また、外出が数日続くときには、水不足も心配されます。そんな時に頼りになるのが、自動潅水システムです。
今回は、前回に続いて自動潅水システムについて紹介します。

潅水システムは、1.水源、2.濾過装置(フィルター)、3.潅水制御部(コントローラ、電磁弁)、4.送水部(配管)、5.各種潅水器具(チューブ、エミッター、スプリンクラー、スプレイ)から成り立っています。そのうちの、3までは、前回説明しました。今回は残りの4と5について、説明をします。


ここから送水部分、つまりパイプによる配管部の話です。配管は硬質管でする場合と、ポリエチレンパイプでする場合があります。硬質管は埋設でき、頑丈で見栄えもいいのですが、切断の際に道具がいるので、家庭で簡単に潅水のラインをまわすには、ポリエチレンパイプの方が扱いやすいです。また、配管の角度を変えたり、支管へと分岐させるには、各種継ぎ手が必要になります。では、主管と支管に使う材料を紹介します。
- 主管
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主管とは、給水栓から潅水制御装置を経た水を、潅水が必要な庭全体に送水する管のことを言います。主管には直接潅水器具を付けることは少なく、通常は、そこから支管を分岐させ、支管やその先端に植物に応じた潅水器具を取り付けます。
主管として使われるパイプには次の2つの種類があります。
- ・ポリ塩化ビニル管(Polyviniyl chloride pipe, PVC)
- 硬質の管で家庭用水道に多く用いられており、13mm、20mm径のものが多く使われています。スプリンクラーによる潅水を行う場合は主にこれを用います。
- ・ポリエチレンパイプ(Polyethylene plastic pipe, PE)
- 軟質でポリ塩化ビニル管よりも加工がし易いのが特徴です。16mm、20mm径のものが主に使われています。 マイクロイリゲーション(低水圧でも稼働する潅水システムの総称)を用いる場合は主にこれを用います。
- 支管
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ドリップチューブ以外の潅水器具は、主管から伸ばした支管に取り付けます。主管を血液の動脈に例えると、支管は毛細血管にあたります。支管には、主管と同様に、ポリ塩化ビニル管もポリエチレンパイプを用いることができますが、マイクロイリゲーションの器具を取り付ける際には、4/7PVCチューブも用います。
- ・4/7PVCチューブ
- 内径4mm、外径7mmほどの軟質で加工しやすい黒色チューブ。その外見からマカロニチューブとかスパゲティとも呼ばれています。先端にエミッターやマイクロスプレイを繋げるのが一般的ですが、インラインエミッターならば、管の途中に付けることもできます。より細い、3/5PVCチューブもあり、こちらは定流量エミッター+4分岐チューブにて構成されるペグ式潅水器具の分岐チューブに使われています。
- 継ぎ手
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継ぎ手には、I字継ぎ手(ライン状につなぐもの)、L字継ぎ手(配管を直角に曲げたいときに使う)、T字継ぎ手(主管から支管を分岐させたいときに使う)、エンド(配管の末端を閉じるときに使う)の4種類があります。
いよいよ、潅水システムの末端にやって来ました。末端には潅水器具をシステムにつなぎます。潅水器具とはつまり、実際に水を出して植物に与える部分のことを指しています。もっとも簡単な潅水器具は、ホースやジョウロですが、ここで私たちが取り上げるのは、自動システムに組み込んで用いる器具についてです。家庭で利用できるものなので、どのようなものが主流であるのか、知っておいてください。
潅水器具には、様々なものがあります。が、大きく分けると、スプリンクラーのような飛散型の器具と、植物の根元でジワっとしみ出るドリップ(滴下)型の器具に分けられます。前者は、農場や芝生に用いる大型のものから、低木などに用いるミニスプリンクラー(スプレイ)まで多様であり、また、後者もホースにドリップ部分が埋め込まれているインラインドリップホースから、配管の末端に付けるドリッパー(エミッター)と呼ばれるものまで、様々なものがあります。そうした中から、潅水場所、植物、土壌、潅水効率に合ったものを選択しなければなりません。
特に、水を無駄にしない潅水を行うために、器具の選択は重要になります。以下にもう少し詳しく説明をします。
1)飛散型潅水器具(散水器具)
- スプリンクラー
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水に高圧をかけることによって、広い面積にほぼ均等な水を散水する構造になっています。そもそもはアメリカの広大な農場で使われるために開発されたものが、小型になり、公園の芝生などにも使われて来ました。形状により次の2つに大別されます。
・ロータリースプリンクラー

本体に内蔵された機械と水流によって吐出部が回転運動する構造になっています。
直線的に水を噴出するので散水半径が広く、大規模な敷地での散水に適しています。ゴルフ場や公園の芝への潅水にもこのタイプが用いられます。・スプレイスプリンクラー
筒状の本体から霧状(スプレイ)の水を散水します。
散水パターンは幾つかあり、通常は、全円、半円、1/4円、自由角などが設定できます。適用圧力もロータリーと比べて低く、散水半径が数メートル程度です。家庭では大きめの芝生や小公園の芝生には、このようなスプレイスプリンクラーを用いることができます。
選択のポイント
スプリンクラーを利用したいと思う方は、まず、次の3点について器具の能力を調べる必要があります。
- ・潅水半径
- ・散水パターン
- ・適応圧力

選ぶにあたっては、スプリンクラーで水やりをしたい場所が、すっぽりと器具の潅水範囲に入るのが好ましいのですが、敷地よりもそれが広すぎても、水が道路など不要なところにまで与えられてしまう可能性があります。潅水面積と敷地面積との差が余りでないように、器具を選ぶとよいです。最近は、散水パターンの多様化により、全円だけでなく局部的な散水にも対応する器具が増えていますので、その種のものを組み合わせるとよいです。あるいは、面積によっては、後ほど述べるミニスプリンクラー(別名:マイクロスプリンクラーあるいはミニスプレイ)にて潅水を行ったほうがよい場合もあります。これについては、マイクロイリゲーションの段落で説明します。
さらに、元々スプリンクラーでの散水は、風に乗って散水が拡散される際の損失分があります。このため、水効率という点からは余りおすすめできません。差し当たって庭の芝生のために、ローター式のスプリンクラーを1つというのがよくある方法です。が、本来スプリンクラーとは、広大な敷地で人力での水やりや配管での水やりが不適当なときに、もっとも勧められる方法だと言えましょう。利用の際にはあとひとつ、適応圧力にも注意して下さい。飛距離が飛ぶ器具ほど高い圧力を必要とするので、水道のままの水圧では使えないことがあります。庭では高い能力のものは不要と思われますが、一度仕様を確認することをお勧めします。
スプリンクラー設置の注意
- 均等に散水されるように、隣り合うスプリンクラーの潅水半径が重なるように配置する。そうすることで潅水半径の間で発生する散水むらを補うことができる。
- スプリンクラーは、次のような場所には適さない。
→植物がまばらに植栽されている地表面(非効率)
→地表が植物でおおわれてその葉で散水が妨げられ、地表面に届きにくい。(非効率)
→屋上など風の強い場所。(水を飛散させるので非効率)
いずれの場合も、次に述べるマイクロイリゲーションを用いたほうが効果的です。
そしてスプリンクラーを用いる場合には、水の有効利用のために、散水の時間や時間帯を調節し、散水を朝か夕方の、風のおだやかな時間帯に行うことで、蒸発散を最小限に抑えることができます。
- マイクロイリゲーション
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大農地で発展したのがスプリンクラーによる潅水であるのに対し、施設園芸で使われていた潅水方法が、マイクロイリゲーションです。アメリカでは70年代から盛んに庭やランドスケープ地の潅水として用いられるようになりました。特に住宅地では、通常の大型スプリンクラーでは大きすぎたり、また給水圧の点からも、スプリンクラーの多使用ができません。この点、マイクロイリゲーションには多くの利点があります。
マイクロイリゲーションのメリット
潅水は、植物の種類と大きさを考慮して最適な水量を与えることが大事です。多すぎれば植物にとっては無駄になってしまいますし、少なすぎると植物の健康管理が上手くいきません。ですが、この、植物にとっての最適量を潅水するということは、意外と今まで考えられてきませんでした。私たちは、無意識にジョウロやホースで適当に水を与えていないでしょうか?
マイクロイリゲーションの利点は、効率的な潅水が行えることです。なぜならば、1つ1つの器具の放水量が規格により決められています。マイクロイリゲーションは、ボタンのような形をしたエミッター(あるいはドリッパー:滴下)と呼ばれる水の吐出口を配管の先端につけるシステムを主としますが、一般にエミッターには、1時間あたり2リットル、3リットル、4リットル、8リットルを放水する種類があります。私たちは、マイクロイリゲーションシステムの計画のためには、この中からそれぞれの植物にとって適切なエミッターを選べばよいのです。例えば、Aという植物には吐水量が毎時2リットルのものを、その隣のBという植物には毎時3リットルのエミッターを選ぶことができます。しかも、それらを1つのラインにつなぐことができるため、理論的には、個々の植物にあった水量をそれぞれ与えることができるようになります。
では、このエミッターのさまざまな種類を紹介します。
- マイクロイリゲーションで使用するエミッター(放水口)の分類と特徴
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・マイクロエミッター(マイクロスプリンクラー、マイクロスプレイ、ミニスプレイ)

器具の中心に備え付けられたエミッターから狭い範囲にスプレイ状(霧状)に水を地表面へと飛散させます。いわば、スプリンクラーの小型版です。狭いエリアのグランドカバーや根の張りが浅い植物のように、根元に直接潅水するのが難しい植物に効果的です。
・ドリップエミッター&ドリップチューブ

水は、エミッターから直接土中に浸透するので、潅水されるエリアはマイクロエミッター(マイクロスプリンクラー)よりもさらに狭い範囲に限られます。また、一点から吐出されるので、水の重力方向と垂直方向の広がりに対しては土質に左右されます。

まさに、ピンポイント的な仕上がりとなりますが、地表流出や地表からの蒸発が他の潅水器具に比べて少なくてすむため、潅水が効率的となり、水道代の節約にもつながり、水資源の保全対策として最も有効的な方法です。これがポリエチレンパイプに等間隔に内蔵されているものをドリップチューブと呼んでいます。
【土質によるドリップエミッターの水浸透性の比較】

・多孔管(ソーカーホース)

スポンジ状の硬質管から水がしみ出るようにでてくる器具です。線上に連続したドリップと言い換えてもよいでしょう。水もより柔らかく出て、また、ドリップチューブよりも多くの水を放水します。このため広い面積には向いていません。
マイクロイリゲーションの設置
ゾーン別に分けて、例えば、低木のゾーンにはマイクロスプレイを、花壇にはドリップチューブを、鉢花がいくつもあるところには、それぞれの鉢にドリップエミッターを、と使い分けることができます。さらには、それぞれのラインを最終的にひとつのラインとして、自動潅水システムへと組み込むことも可能です。
このとき、ドリップエミッターとスプリンクラーを併用したり、ドリップエミッターを直列に幾つも繋いだり、またはドリップチューブを長距離用いる場合には、ライン末端のエミッターが、水量不足になってしまうことがあります。この対策として、定流量エミッターと呼ばれる種類のエミッターを使うことにしましょう。これを用いることで、末端まで定流量の潅水を行うことができます。
設置上の注意
- 目詰まり防止のためにフィルタを設置し、チェックと洗浄を定期的に行う。
- 稼働している間、管の破れや潅水器具のはずれや破損によって水が出過ぎている箇所がないか、定期的にシステムをチェックする。
- 冬期は凍結予防のため、管内の水を抜き備品の水切りを行う。
- 自動制御コントローラーを使った潅水システムにし、雨の日には潅水プログラムをストップする雨センサーを取り付けるようにします。

参考資料&協力
『Landscape irrigation 』Stephen W. smith
『マイクロスプリンクラーかんがいテキストブック』(社)畑地農業振興会
『土地改良事業計画指針 マイクロかんがい編 』農林水産省構造改善局計画部
『イーエス・ウォーターネット製品ガイド』(株)イーエス・ウォーターネット
『資源エネルギーとランドスケーピング』小出兼久&JXDA
監修:小出 兼久
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会
URL:http://xeriscape-jp.org
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