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第88回 植物について学ぶ バックナンバー
 木枯らしの吹く季節となり、庭は来年の春まで休眠しています。冬は、多くの植物にとって何も動きのない時期だと思われがちですが、実は、春に備えた大事な時期でもあります。私たちも植物を見習って、今の時期に、翌春に備えて学んだり庭の準備をすることにしましょう。 イメージ
植物の生長と休眠
まずは、どうして植物は冬に休眠するのかについて説明をしたいと思います。それは、植物の性質と深く係っています。植物には生育に適した温度というのがあり、気温や土の温度がその温度を上回っても下回っても、根や植物の身体は生長をやめてしまいます。本格的な冬に向かって温度が低下していく今の時期は、温度の低下と共に日が短くなる時期です。温度と日の長さは、植物の活動スイッチのオンオフの切り替えをする指標で、一定の範囲よりもそれが低下するあるいは短くなると植物は休眠に入ります。それはおよそ10度より下だと思われます。植物の生長と言っても全部が同時に生長するわけではありません。植物の生長は大きく分けて、1根が生長し、2茎葉が成長し、3幹が太るというように段階的に行われます。根の生育適温は、植物の種類によっても異なりますが、おおまかには10〜25度あたりで、いずれも茎葉の生育適温よりも低めの値となります。気温も土壌もこの温度よりも低下すると植物は休眠する体勢へと変化していき、高すぎても生長が止まります。(もちろん、熱帯に生息する植物と温帯に生息する植物とでは、生育適温は異なります)
休眠とは日ごとに短くなる日と低下する温度が誘導するもので、その後、再び生長が始まるためには、温度の上昇と日ごとに長くなる日が必要です。初春の芽がまだ出ぬ時期でも、根の活動は活発になり始め、低温の下で芽の分化は進み、その後、ひどい低温にあうと休眠は打破されて地上部の生長もまた始まります。

こうしたわけで、私たちが暮らす温帯では、春夏秋冬それぞれの季節が巡り、温度変化日照変化がなければ、植物の1年の営みは始まりません。植物は、家の内外に係らず、暖房で1年中暖かいところよりも、冬は休眠できるほどの涼しい場所に置いたほうがよいことになります。温室栽培であっても、やたらと暖かくせずに、天気のよい晴れた日はガラスをあけて風通しをよくするなど、過保護にしすぎないようにします。また、低温期が多くの植物の芽を分化させます。ですから、沢山の芽を出させるためには、しっかりと低温にあてるとよいことになります。
霜と防寒対策
しかしながら、植物には低温が必要なその一方で、低温は植物に害を与えます。霜もしかりです。どちらも被害にあうと、植物が凍りついたり、しおれたりして、酷くなると枯れてしまいます。こうした被害を防ぐためには、特に霜に敏感な植物は、鉢物であれば南側に置くこと。その際に霜の当たらない軒先などにおくとなお良いです。露地の場合には、腐葉土や、藁、ウッドチップなどでマルチングをするか、ビニールや素焼きの霜よけを被せましょう。マルチングは針葉樹の小枝で周囲を覆うことでもいいです。また水やりは暖かい午前中までにとどめ、午後から夕方などに与えてはいけません。
さらにマルチングの注意点をもうひとつ。マルチングを土壌にすると、土中の温度が一定に保たれるので、寒い時期は防寒としていいのですが、氷が解け始め気温が暖かくなってきたら、こうした覆いは外します。そうしないと春からの温度上昇があっても、今度は土壌が温まりにくくなるからです。注意しましょう。
なお、春先の突発的な遅霜対策としては、個別に天気予報とつき合わせて前の晩に予防します。

強い風にも注意が必要です。風は植物を倒したり損壊させるだけでなく、周りの水分を奪って乾燥を促進し温度を下げてしまいます。そのため、北からの強い風にさらされる場所には、防風林や生垣が必要です。落葉樹の葉のあるときには気がつかなかったものを、落葉後に環境が変わる場所もありますので今の時期に庭を歩くことも大事です。モクレン、アジサイ、ライラックの他、つる性植物ならばトケイソウ、グラス類はペニセタムなどは風に弱い傾向があります。
耐寒性について
新しい植物を購入する際には、耐寒性があるのかないのか注意が必要です。最近では、苗のラベルにも耐寒性についての注意書が書かれるようになりましたし、耐寒性についての認識は高まっているのではないかと思います。また、都市部の気温が上昇して、今やカポックなどの観葉植物も屋外越冬できる時代なので、図鑑などの知識と地域によっては異なる場合もあります。さらに言えば、余程の大きな樹木であるとか、元々熱帯産の鉢花や観葉植物などでもない限り、露地での耐寒性はある程度は気にしなくても大丈夫です。それは、霜よけや防寒シートをすることで防寒効果を増すことができるからです。一つだけ注意が必要なのは、購入した苗が温室育ちで過保護なあまりに、外に植えると傷むという場合ですが、これはその種類が元々耐寒性があるのならば、一時的には損傷しても回復するので、心配しなくても大丈夫です。但し、季節に早い花は諦めたほうが無難です。
環境への様々な耐性
植物が健康に生育するためには適切な環境が必要です。では「環境」とは、どのようなことかというと、光、温度、湿度、土壌湿度(水分) 、通風などの条件を言います。


植物は、光合成によって栄養分を作りだすために光を必要としています。とはいえ、では、すべての植物にたっぷりと光が必要なのかというと、そうでもありません。植物の中には、木陰のような明るい日陰や、一日のうちに3時間程度しか日の射さない場所でも十分に生きていけるものがあります。植物の光に対する好みあるいは耐性を調べると次のようになります。それぞれの特徴を知り、合った場所に植えることが、健康な植物を作り出します。

 ・日なたを好むもの
 ・半日陰を好むもの(半日陰に耐えるもの)
 ・日陰を好むもの(控えに耐えるもの)

日なたの植物
まずですが、日なたを好むものというのはつまり、直射日光を好む植物のことです。そして、日なたがどのような場所を差すのかを説明すると、およそ目安としては、初夏から夏の5月から8月に、1日7時間以上日があたる場所を日なたと考えます。1年草を中心に、綺麗で鮮やかな花をつけるものは、大体日なたを好みますが、他の植物には、日陰を好む草花もあります。そうした草花を誤って日なたに植えてしまうと、容易くしおれたり、葉が焼けたりします。逆に、日なたを好むものを日陰に持って行ってしまうと、暗すぎで生育がストップしたり、花がつかなくなってしまいます。誤った場所に植えた植物は、病気になったり生長が停滞したりします。それを防ぐには、どのような植物でも植えた後の様子を観察し、生育不良と思われるときにはその原因を探し出すことです。

半日陰と日なたの関係
半日陰とは、1日に3〜4時間日光があたる場所、あるいは、それ以上の時間日があたるとしても、木々の梢の間から日が射すなど、直射日光よりも光が薄められてあたることを言います。このような場所は、敷地内には多く存在しています。また、仮に日なたを好む植物であっても半日陰に植えられていることも多く、日なたが好きでも半日陰に耐える植物もあるので、敷地内に植えられた植物のうち、これが正解、あれが不正解とは中々決め付けられません。1年草は日なたを好むものがほとんどですが、その中にも少しですがインパチェンスのように半日陰に生育するものもあれば、ベゴニアのように半日陰に耐えるものもあります。こうした例外を覚えておけば、1年草=日なたという図式がかなり使えるはすです。また、多年草の多くは半日陰に耐えます。日なたを好む多年草もありますが、その多くは、大きな花を咲かせたり沢山の花を咲かせる品種、また、実がなる品種です。花や実を愛でるものは、日光が必要です。とはいえ、植物が半日陰に植えられたからといって、急に枯れてしまうことはありません。合わない場合には、花付きが悪くなったり、茎や幹の節と節の間が離れて育つ、つまり、ひょろひょろと徒長するという症状でまず、現れます。そのため、この時期に植え替えるなどの適切な処置をすれば、その後の生育不良はかなり防ぐことができます。

日陰の植物
日陰とは、1日に2時間程度日光があたる場所をいいます。このような場所でも林の下草などの中には、生育できるものがあります。ヤツデなどの常緑樹も植えることができます。まったく日が射さないところでは何も育てることはできませんが、1日に2時間しか直射日光が当たらなくても、建物や舗装床などからの反射光によって、日が出ている間はそれなりに明るい場所もあります。そうした場所は比較的植物がよく育ちます。
どうしても日が当たらない場所に、無理に植物を植える必要はありません。そのような場所は方針を変えて、ガーデンファニチャーや舗装した床面や建物の壁、その他のアクセサリーの色や材質によって、明るくみせる工夫をすることです。例えば鉢の色をひとつ変えただけでも、印象はガラッと変わります。

光と植物のまとめ
1) 花実を観賞する植物はほとんどが日なたを好む
2) 日なたから半日陰まで植物の光耐性は強い
3) 日陰の中から明るい日陰を探し出す。
4) 無理はしない


植物にとって、水は生命の源です。冬には休眠に入るためにそれほどの水は必要ありませんが、春からのガーデン計画を立てる場合にも、水やりの要否やその方法、効率性の追求などについて、検討をする必要があります。これを考える際には、前号でも述べましたが、まず、植物が「蒸散」という作用で葉裏の気孔から水蒸気を出していること、その反射として「根から水分を吸収」できることを知っておきましょう。これが何の役に立つのかというと、例えば、移植の際に誤って根を切りすぎてしまったとか、枝葉の活動が活発な時期に移植をするというときは、蒸散>根からの水吸収ということが起こります。するとどうなるかといえば、根から入る水よりも出ていく水の方が多いために、植物が「しおれる」という現象が起こります。逆に、土壌が湿っていて空中の湿度も高いならば、植物は蒸散を抑制します。ならば、根からの水の吸収も控えられるということになるのですが、ここで土壌の水分過多が続くようであれば、水が多すぎて根腐れするなどの、害が現れてくるのです。
蒸散と根からの吸収する水との関係を知っていれば、どちらかに天秤が傾くことが、植物の健康を損なうのだと分かると思います。

植物は地上部であれ地中の根であれ、そこに存在できる水が飽和した状態から水がなくて乾燥し萎れてしまうという状態までの間で、上手く生活をしているのですが、水分バランスが崩れると、しおれたり枯れたりします。個々の植物にとって適切な水の量はそれぞれ異なりますが、傾向としては、乾燥に強い植物と湿潤に強い植物、その中間の植物という3種に分けることができます。この3種類の植物を自分の環境に合わせて用いると、水やりの少なくてすむ庭を作ることができます。
庭づくりのために学びたいこと
次に、庭の計画に必要なこととして、植物自身のことをまとめておさらいしましょう。庭でもベランダでもどこでもそうですが、植物を増やそうと思ったら、新しい植物を知らねばなりません。でなければ、枯れたらおしまいということになってしまうからです。

植物を覚える
「植物を覚える」こう書くと苦手と思う方もいるでしょう。ですが自分の庭をもっとよくしたい、改造したいという願望があるならば、覚えねばなりません。そのためには、まず、観察をすることから始めましょう。

ヒントは身の回りにある
植物の覚え方として最も簡単なものは、日頃の通り道や公園、観光地、気に入った他所の庭…などなどどこでもいいのですが、そこでみた植物を覚えておくことです。記憶に留めてから家に帰り、図鑑を引けば完璧ですが、急ぎで入用でないのならば、まずはいろいろと見て、データを蓄積しておきましょう。大切なのは周囲の環境とともに覚えておくことで、ただ「可愛い」とか「綺麗だ」と思って覚えるのではありません。つまり、いつ、どこで、どのような状態でそれが育っていたのか…を、覚えておくことであります。

例えば、いつも通る道に綺麗な花が咲いている、季節は4月。草丈や繁茂の様子を見てみると自分の庭にも合いそうだ…などと思ったら、さらに一歩進めて、その場所は日なたか日陰か、水は沢山要りそうだろうか、管理はどうだろうか…と、自分の推測を含めて色々な角度から観察をしておくといいのです。 ここで、マメな方は、持ち主に聞くなり図鑑を調べるなりの手段に出ます。そうすれば名前が何で育て方が何で…と情報が正確に修正されてインプットできます。これはお勧めです。さらに他の植物もそのようにしてデータを蓄積していきましょう。とはいえ、図鑑を調べたりしなくても、とにかく沢山見ることが大事です。観察し続けていれば、自分の推測の正否はいつか分かるときがくるのです。 別の日に別の場所で。偶然にも先日の道に咲いていた花を発見したとします。それが先日のものと似たような環境に育っているのならば、あなたの中でこれは、(例えば)日なたを好む、と確信が生まれるでしょう。違った環境ならばまだ判定はお預けです。 このような観察は、迂遠に思えるかもしれません。ですが、物を作ることは総て観察と好奇心から始まっています。庭のデザインにしても、あの小道のデザインが素敵だったとか、床の貼り方が美しかったとか、植物とデッキの組み合わせがマッチしていたとか、日常の様々なシーンから、自分の琴線に触れたものを洗い出し、分析し、再度組み立てなおすことで、自分にあった新しいものが出来上がっていきます。

イメージ今回の話は一見するとつながっていないようにも見受けられると思いますが、観察することの大切さを書いてみました。慌しい師走を過ぎて新年を迎え、気持ちにゆとりが出てきたころに、周囲を見渡して自分にないものや新しいものを取り入れようとするときに、参考にしてください。まず見ること、与えられた材料から推測すること、確かめること、自分なりに判定すること、そうやって一歩一歩新しい植物や技術、情報を、自分のものにしていくとよいのではないかと思います。

バックナンバー
監修:小出 兼久
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会
URL:http://xeriscape-jp.org
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