“緑のある暮らし”フォーラム 自然に育まれている私たち…ともすると忘れてしまいがちな本来の視点から、21世紀の暮らし方をイメージしてみませんか?

第106回 眺める、見つめる、緑の効用

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緑には癒しの効果があると言われます。確かに、目にするとほっとしたり、疲れ目に優しかったり、……単純に美しかったり、生命の躍動を感じたり……緑の多い空間は私たちに「緊張しなくていいよ、肩の力を抜きなさい」と語りかけてくれそうな気がします。

その流れの中でなのかと思いますが、屋外や屋内で「草」が使われだしてから、20年が過ぎました。

草とは何か、それは、一般に、イネ科の植物を指します。ですから、その数は膨大なものがあります。

雑草も多くあります。雑草ではなくて、庭で有用な草とは何か…?と問うならば、一番有名なのは、芝生に用いる芝草の種類です。ベントグラス、バミューダグラス、ライグラス、コウライシバなどなど。また、最近ではナーサリーで「園芸植物」として栽培され、市場に出されるものも多くあります。

今回は草の効用と利用の仕方、それから、草も植物も眺めることが第一の利用法なので、「眺める」ということについても触れてみたいと思います。

とあるディナーパーティで、次のようなテーブルセッティングが話題になりました。

優雅なテーブルに白く上品なリネン、その上にどっしりとした気品のある白い陶器とバカラクリスタル。

この華麗な構図の中央にあるのはたった一色緑で、年月の経った木製の箱の中に茂る草、その箱の中の草地がセッティングの中心でした。その時、インテリアデザイナーは、「花よりも多くを語ります」と言ったそうです。

草は田舎にあるときには、ただの草です。道端でもどこででも見ることができるものという認識でしかないのに、1990年代ごろから、都市のモダンなインテリアとして、好まれて使われるようになりました。都会人が、田舎あるいは前世代の道徳律への郷愁を抱くのでしょうか。リターン・トゥ・グラスルーツ、草の根に還る、とでも呼ぶべきでしょうか。

「恐らくは、いつの間にか、きらびやかで華美な装飾がもてはやされる時代ではなくなってしまったのです。花を幾重にも重ねて人を驚かすようなアレンジメントはもう必要とされていません。それよりも、清潔さが要求されているのです。草はもっと特別な表現なのです。自然で健康的な応答であり、見解としては東洋的ともいえるでしょう」これは90年代の上述のインテリアデザイナーの言葉です。

彼が、小さな草地をダイニングのセンターピースとしてあるパーティに用いた時、それは、会話を妨げる背の高さではないため、邪魔にならず、テーブルの上ではとても上品だったといいます。面白い効果を出すために、野生の花を草の中にちりばめることもあるそうですが、成功の鍵は、あまりたくさんのものと草を混ぜないことで、「発想の原点は簡素であること。石、繊細なラン、アマリリスあるいはスイセンの球根を植えることもあるかもしれません。私の考えでは、窓の外を見たときにそこにあるような光景をつくることです。花屋のようにずらりとならべるのではなく」と、言っていました。草類は、ベイビーティアーズでも代用でき、いずれも2、3カ月はもつそうです。

草を日に当てるときの注意点

草を植えたならば、丈を丁寧にセットするにしても自然のまま成長させるにしても、しっかりと日光にあてる必要性が問題となります。草は、十分な日光に当たらないと2、3週間で茶色に変色してしまうからです。厳密には、種類によって必要とする日照量も変わるため、それぞれに対応が違ってきます。因みに、最低の日照量に耐えるのはライグラスです。

どのくらい日に当てるのかについては、個別の植え方や草丈と根の深さによってもかなり異なるので、一概には言えません。容器に植えてみて、日の当たる場所に置き(日陰を好むものは日陰に置き)、容器の中で安定して生育するようになるのを待ちます。

もちろん、日を待たずに即席で求められるテーブルディスプレイもできますが、その際は、弱ってきたなと思ったら日に当てることが必要です。

一番よい方法は、芝草を植えたコンテナを2つ用意し、片方は屋内で、もう片方は屋外でのディスプレイに用い、そして、定期的に屋内と屋外とを入れ替えることで、それぞれの鮮度を保つようにすることです。ただ、予算とスペース的な理由から同じものを2つ用意できないこともあります。その場合は、屋内に置いているものを外に出し、適時日に当てることになりますが、暗所から急に日の当たる場所にださないように注意しましょう。特に、真夏の直射日光は危険です。これを(夏だから外に出せるからと)観葉植物で行うと、十中八九、日光で葉が焼けて無残なことに一瞬でなります。草類はそれよりも耐性がありますが、それでも屋内に置かれていたものは、まずは、外の明るい日陰におき、それから、段々と適した日照量のところに置くようにして馴染ませます。

草を植える容器

コンテナと言っても、鉢にこだわらず、身の回りの生活用品を使って、植え込むことができます。なめらかでくぼみのある手のひらサイズの石に始まり、アフリカから来た木製のボウル、日本製の漆の器、金属製のコンテナ、などなど「天然の草からもっとも洗練されたものまで」さまざまな入れ物に草を植えてみましょう。意外なことですが、カリフォルニアスタイルでも日本風でも、草が映えるのは、屋内の方です。外には、他に派手なものや人目を引く植物があるからでしょうか。そして、草というのは非常に折衷的です。種類によっては田舎風にもフォーマルにもなります。大まかに言って、背が高く野性的なものは田舎風、モダン、和風あるいは中近東風になり、チーク材の家具との相性がよいです。ビーダーマイヤー様式(ロココ調)の家具には、フォーマルな草で背が低く、高さが一定で短く刈り込んだものが似合います。

屋内で用いる草の種類

一時、新しいアメリカンアートの提唱者たちが、好んで屋内で草を用いており、それも、広範囲にわたって使える種類を探していて、その貪欲さは目を見張るものがありました。草類専門の園芸家である、ジョン・グリーンリー氏によれば、彼も屋内で使われる草の種類について全部を把握しているわけではないが、それでも時に非常に良いものに出会うという。また、お勧めなのは、ライグラスやバミューダグラスのような一年生の草類で、発芽も早く、芽を出して成長し、枯れてお終いなので手間要らずでもあるようです。また、背の高い草が必要なときには、草類ではなく多年草を買ってきて人目をひくこともできます。意外に思うかもしれませんが、草に類似する植物は何百とあります。ニュージーランドフラックス(ニューサイラン)は、大型で野性的な質感のある種類で、硬質で印象的な質感の群葉です。オレンジ色、玉虫色がかった緑色、茶色、銅褐色の草です。これは、矮性種もあるので、屋内での使用は場所に応じて矮性種も利用するとよいでしょう。それよりも、ほっそりした雰囲気で、けれど、芝草ほどの繊細さはいらない、といった場合には、コクリュウ、ベニチガヤなどをお勧めします。イグサのミニチュアで、緑、黄緑、スチールグレーといった色を持つ円柱状の群葉もあります。

刈って形を整えた、みずみずしい草のやさしい趣を好むのか、それともワイルドなサバンナを屋内に登場させたように演出するのか、いずれにしても草というのは、私たちが緒的に反応せずにはいられない、たくましさを内に秘めています。それは、経済成長や開発による発展を求めて歩みを進めて来たことによって失ったものなのか、あるいは、心の奥底に追いやっていた感情を掻き起こすのか分かりませんが、不思議なことに、他のどんな花類よりも感情を掻き起こします。

切花として飾ることでもよいですし、一度、試してみることをお勧めします。それくらい、草の魅力は味わい深く、計り知れないものがあります。

草は人にやさしく、風変わりで、でも普通で、それでいてカジュアルなのだそうです。どことなく親しみやすさが草にはあり、決してシビアな相手ではない、そんなところが疲れた現代人に人気なのかもしれません。

箱型の芝生を植える

芝生は水を食う、除草や刈り取りなどの手間がかかる、といった欠点がありますが、それでも芝生の需要は手堅いものがあります。環境に合えば(刈り込みは必要ですが)使い勝手の良い植物だからです。シンプルな段々に芝生を植えて芝生のステップとなっています。緑の平面が広がるのは目にも優しく、デザインも面白いのですが、惜しむらくは、手動でしか芝刈りが出来ないことでしょうか。ただ、日本では灌水をしなくても、ある程度芝草は育つので、種類の選択も適切に行い、その辺、上手く取り入れていくとよいと思います。非の打ち所のない素晴らしい芝生を作るのには灌水が必要です。

余談ですが、緑を癒しとするならば、緑を眺めることは私たち人間の活動の中から無くなることはありません。そして、芝生をまったくこの世界からなくしてしまうということもないでしょう。ただ、使い方は、公共の空間以外では変わっていくかもしれません。そんな危機感が少しあることを知っていただければと思います。

眺めの変わる庭

一段また一段と上るたびに、眺めが変わる庭があってもいいです。土留めの板は2×10で、3〜5年で交換します。どこの場所に立ったら何が見えるのかを把握することはとても重要で、作り手はそれを楽しみながら作り、享受する側も楽しんで眺める……そんな関係が生まれるならば、作り手の側としては冥利につきることと思います。眺めるという動作は、(やや)遠くからその景色を見つめるというニュアンスがありますが、その対象に近づいて行ったときに、「あれ?」と、二度見するような、そういう作りになっていると、楽しいものです。

写真のボックスに植えられているのは、常緑と落葉と両方で、常緑はコニファー以外に常緑広葉樹、それから、サントリナやセキショウなど、低木や草本類も上手く取り入れています。落葉するものは、色鮮やかなヤマモミジを初めとして、色づく樹木や宿根草が植えられています。その間を季節の草花が埋めており、今、咲いているのは、ユリとオレンジのクロコスミアです。どれも、遠くからみたときには、それぞれの色と形のかたまりですが、近づくと、モミジの葉の繊細な様子や、クロコスミアの踊る蝶のような花など、それぞれに趣があり、興味を引いてくれます。

眺める鉢

装飾的な鉢は、それだけで人目を引くものですが、その鉢のインパクトにも負けないほどの色あわせで、相乗的にかなり目立つ一鉢になっています。

目の覚めるような色の組み合わせをしたいと思い作ってみても、その出来が実際には今ひとつと思う方も多いかもしれません。そんなときにヒントとなるのは、この写真のように異なる種類の物を組み合わせる方法です。私たちは色合わせについて、自然と同じ種類同士や、あるいは、せいぜい草花同士のみでの組み合わせを考えてしまいますが、組み合わせる対象範囲をこのように、樹木と草花やグラウンドカバーなどへと広げれば、意外と効果的な組み合わせが見つかるものです。写真は、黄金ヒバ2種の暖かみのある黄金色と、赤とピンクのリーガス・ベコニアがはっとするほどのコントラストを与えており、さらに、モミジバゼラニウムのチョコレート色とイワナズナ(アリッサムの近縁種)の鮮やかな黄色が、色の組み合わせに深みを与えています。このようなコンテナは、花が沢山咲いていることも大事なので、できるだけ花の咲いているものを選ぶか、数株をまとめて植え、ひと夏を楽しむと割り切ることもいいかと思います。遠くから眺めても、また、近寄って眺めてもいい場所に、置くといいと思います。

夏が終わったら、モミジバゼラニウムとリーガスベゴニアは掘り上げて植え替え、室内へと取り込み、その代わりに耐寒性の青緑色や濃い緑色のコニファー、或いは、実のなるヒイラギやミヤマシキミなどを植えておきます。

装飾的なコンテナに植物を植える場合に、コンテナの持っている品や存在感に、植えるものが負けてしまうことがあります。良くある、ぱっとしない植え込みがそれなのですが、失敗をしないコツの一つは、上記の例のように、派手な目立つ色を植えることです。しかも、それ一色でも良いくらいのボリュームがあれば、尚よく、後は、種類を増やすに従って種類ごとのボリュームのバランスをとればよいです。

しかし、人目を引く組み合わせは、これだけではありません。次に、同系色の組み合わせを例に挙げます。

置くだけで豪華な雰囲気の出る鉢には、これ以上はないという渋い色の組み合わせも似合います。葉を模した装飾的な持ち手のハドリアヌスの壷と呼ばれるデザインで(勿論現代製)、古びた加工をしてあります。その黄色に映りの良い緑を持ってきて、緑の色調の違いだけで色々と組み合わせたのがこちらの寄せ植えです。中央にスタンダード風に仕立てられているのは、ハイビャクシン‘シルバー・ミスト’で、下草には、レッドウッドの‘アルボスピカータ’、桃色の花が美しいツボサンゴの‘ピンク・フロスト’、モンタナマツ、非耐寒性のシダ、斑入りのプレクトランサスなどが植えられています。針葉樹の細かい葉とそれよりやや大きいプレクトサンラスの白覆輪の葉、ツボサンゴやシダの葉、というように葉の大きさが何種類も重なり、また、葉の色も白交じりから、明るい緑、青緑まで幾つか混じっています。ツボサンゴの花は小さくて地味であり、近くに寄らないと分からないかもしれませんが、これも煙るような良い質感を与えています。通路の行き止まりなど、視線誘導の終点にこうしたコンテナを置くとよいでしょう。近寄って眺めると、また違った趣があると楽しくなります。

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監修:小出 兼久
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会
URL:http://xeriscape-jp.org

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