立秋もすぎましたが、暑い日が続いています。こう暑いと冷たい水一杯もいっそう美味しく感じられるもの。そして水の恵みは、人間でなくとも植物にとっても同じように価値あるものです。まだまだ暑いこの時期に「植物と水」について考えてみませんか。
水と植物の第2回は、「植物と水の循環」について紹介していきます。
水は、私たち同様植物にとっても、生死を握るとても重要なものです。植物は、生命の静止状態である種子の時には、全体の5〜15%しか水分を含みませんが、生きている植物体では、その70〜90%は水からできています。そしてこの水がわずかに減ってもその形態を維持できなくなります。それがしおれ症状です。例えば、イネやトウモロコシ、ヒマワリなどの葉では、水分の約10%が失われただけでも影響が出始めます。
植物が、いつも生き生きとピンと張った形態と姿勢を保ち続けていられるのは、植物細胞に膨圧(ぼうあつ)が働いているからです。膨圧は浸透圧に対抗して細胞の内部から外に向かって働く圧力で、その原動力は水です。細胞を満たす水が不足すると、膨圧が低下し、植物はしおれの症状を見せ始めます。
健全な植物とその細胞(左):膨圧により細胞の堅固性が保たれている
しおれが生じている植物とその細胞(右):膨圧の低下膨圧の低下により構造強度が失われる
しおれ(乾燥)対策
鉢花が水やりを忘れてしおれきってしまったとき、全体を新聞紙で巻いて水入りのバケツに十分に付けておくか、水やり後ビニール袋をかけておくといいです。要は、植物地上部の周囲の湿度を保って、蒸散を促進しないようにするわけです。
この他、次のようなことも、実践してみてください。
発芽に土は深く要らないが、浅いと乾きやすくなる。そこで乾燥しないようにペットボトルを半分に切って作った発芽用苗床である。
野菜や一年草は、移植を嫌う。花壇や畑に直播きし、ビニールのトンネルで覆って水分を保持する。
図版引用文献:Gayle Weinstein/XERISCAPE HANDBOOK, Fulcrum Publishing
水は大地と大気の間を循環していますが、その一部は植物を通して循環しています。水は根から吸収されると、道管と呼ばれる管を通り、茎や葉、花など体の隅々の細胞まで運ばれて行きます。そして、細胞を正常に保ち、光合成の材料に使われた後、余分な水は体内から放出されます。これが蒸散で、蒸散は主に葉裏にある気孔(きこう)やクチクラ層を通じて行われています。
この蒸散には、生長に必要な水の量の30〜70倍も使われていることが分かっています。つまり水の多くは環境から植物に吸収されて、また環境に戻されているのです。無駄に思えるかもしれませんが、水は循環する間に、光合成で植物の健康や生長を支え、蒸散では周囲の温度を下げるという、大きな役目を果たしているのです。
そんな植物にとって不可欠な水ですから、水管理によって、生長や品質、収穫量が変わってきます。そこで植物と水の関係を知っておくと、適切な管理ができるようになります。
循環の原動力は太陽エネルギー、そして蒸散が根から水を上昇させる主な力と言われています。考えてみれば、木々の隅々まで地下の水をポンプもなく上昇させるのですから、確かなメカニズムは解明されていないとはいえ、植物は本当に神秘的です。
例えば暑い夏の午後には、植物の水を吸収する速度が葉からの蒸散の速度に追いつかずに、体内の水分が一時的に不足してしまうことがあります。そうするとしおれ症状が見られます。草花のように小さい苗ほどすぐしおれて下を向きやすいのですが、これは急性のいわば一時的な状態であって、気温の下降と共にすぐに回復します。ですから、しおれた植物を見てもあわてずに、それが急性なのかそれとも慢性の症状なのか観察してください。夕方や夜になると元気になっていれば安心です。もし夜になってもしおれが回復しない場合は、植物が慢性的に水分ストレスを受けている可能性があります。
水分ストレスには、過剰な水と酸素不足、水不足と過剰な酸素の2つがあります。どちらも水が植物の細胞まで上手く運ばれていない状態です。後者は水をたっぷりと与えれば治りますが、前者、つまり土壌は湿っているのに植物がしおれている場合は、根が過剰な水と酸素不足に苦しんでいるので、根の周りの土をつついて土中に空気を入れるようにします。
しおれは、暑い日には日中に起こり夜回復する一時的なしおれと、
乾燥が続き給水されないことで生じる慢性のしおれがある。
土壌の水の過不足は、根の生長に影響を与えます。水分ストレスが慢性化すると、根の表面にある根毛が枯れてしまいます。根毛は養分や水を吸収する役目をもつ、無数の細かい髭根(ひげね)で、通常は短命で短期間に再生を繰り返しています。しかしこの再生が妨げられ根毛の量が減ると、吸収できる水や養分の量も減り、植物は生長しなくなり、維持も困難になって、やがて枯れてしまいます。また、植物の体内が乾燥すると、これ以上水分を逃さないように、気孔が閉じて蒸散を停止します。しかしそれは、光合成の原料となる二酸化炭素も吸収できなくなるということであり、また、水も不足しているので、光合成で生成される養分量に影響がでて、生長が妨げられ、やはり枯れてしまうことになります。
図版引用文献:Gayle Weinstein/XERISCAPE HANDBOOK, Fulcrum Publishing
水の役割をまとめると次のとおりです。
・
水は植物の体を維持している。根から吸収する水と蒸散で失われる水がバランスを保っていると、植物は健康に生長する。
・
光合成には水が必要である。
・
植物は気孔の開閉によって蒸散量を調節している。(気孔の開閉は同時に、光合成のための二酸化炭素の吸収にも影響を与えている。)
・
蒸散は、根から水を吸収する原動力となる。
・
土壌中の無機イオンを溶かし、根から水とともに吸収させる。
図版引用文献:Smith&Hawken/The Book of Outdoor Gardening, Workman
土中の養分は有機物のままではいくら待っても植物が吸収することはできません。微生物によって無機物に分解され、水にとけた無機イオンの形になって初めて、植物が吸収することができるようになります。
植物の生長には順序があります。一度にすべての組織の生長にエネルギーを費やすことができないからです。水は、芽が出て葉が茂り生長が盛んな頃、開花のはじめ、結実後の実を大きくするときにはたっぷりと必要です。結実には水は必要でなく、また水のやりすぎは、葉ばかりを茂らせ水分の多い体を作り、少しの乾燥や霜害に弱くさせます。
葉からの蒸散に根からの吸収が追いつかないと、植物はしおれひどくなると枯れてしまいます。若い芽や葉は水分をたっぷりと含み柔らかく、環境の変化に弱いです。また、葉が出てくると蒸散が活性化します。樹木の移植は休眠時、芽出しの前や直後、葉がでそろった頃がリスクが少ないです。若い苗は活着も早いですが、樹木も草花も移植初期の水切れには注意しましょう。
参考・引用文献:小出兼久&JXDA/資源エネルギーとランドスケーピング, 学芸出版社
水は本当に大事です。乾燥が続いたら、庭や露地の植物にも水をあげてください。皆さん、水を賢く使って緑を増やし、健康な環境を作っていきましょう。
次回は、耐乾性植物についてお話しします。
監修:小出 兼久
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会
URL:
http://xeriscape-jp.org
環境とエネルギーの節約を考えた
新しい庭づくりを提案!
“JXDA会員募集!!”
JXDAでは、これからの環境を考えた、健康でサスティナブルな緑空間づくりを推進するJXDA会員を募集しています。
会員の方には月に1回、JXDA会報誌「WATER WISE PRESSウォーターワイズ プレス」をお届けします。
その他、セミナーやイベントなどのご案内も随時お送りします。
◆一般会員◆
年会費 6,000円
(JXDA会報誌「WATER WISE PRESS」1部500円×年12冊含む)
お申し込み・お問い合わせは
h2o.team@xeriscape-jp.org
まで。
●JXDA気象観測レポート●
水や資源エネルギーの使用を軽減したランドスケープ環境の創出と
効率的な灌漑システムとプログラム構築のために、日本各地で気象観測をしています。
http://xeriscape-jp.org/climate/
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会(JXDA)
〒187-0021 東京都小平市上水南町1-24-16-6
TEL : 042-359-6571 FAX : 042-327-6277
http://xeriscape-jp.org
“緑のある暮らしフォーラム”は、21世紀の暮し方を毎月みなさんで考えて行くコーナー。
みなさまからのご意見やご感想を募集しております。
お気軽にお寄せください。
毎月、掲載のお知らせをメールマガジンにてお届け致します!