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第57回 侵略性外来種について バックナンバー
毎年この時期になると気になる花があります。

薄いシフォンのような花びらの赤い花で、道端や空地に咲き乱れ、様子からケシの仲間だろうと思えるのですが、長いことその名前を知りませんでした。
あるときそれが「ナガミヒナゲシ」という外来種であることを知りました。

さて今回は少し、こうした外来種についてお話をしたいと思います。
イメージ
ナガミヒナゲシ
ナガミヒナゲシ “ナガミ”というのは、果実が長いことに由来するようです。日本には江戸時代に観賞用に渡来したと言われ、道端の雑草として記録では1961年から確認されています。
しかしここ数年その増え方たるや半端ではない気がします。昨年の同時期に目にした場所では今年も必ず生えしかも増えています。道の際やコンクリートの割目など、およそ普通の植物が生えそうにないところに生えるので目立つのかもしれませんが、空地や街路の花壇に紛れ込んで群生していることも多いです。

ナガミヒナゲシは、地中海地方原産で、ケシに似た花は一日花ですが、次から次へと咲く様は、雑草とは言え見ごたえがあり、わざわざ持ち帰って花壇に植える人もいると聞きます。が、しかし繁殖力が強く、花壇では他の植物を駆逐してしまいます。
興味ある方もいると思いますのではっきり書いておきますが、ナガミヒナゲシの庭への移植はおすすめしません。遠目で眺める分にはいいのですが、庭では他の植物を圧倒します。また、不要な程増えてしまいます。どうもこれは侵略性外来種ではないかと思うのですが、毎年春にしか目立たないのではっきりしません。
タカサゴユリ
タカサゴユリ ナガミヒナゲシ同様に、私がここ数年注目しているユリです。 台湾の地名である“タカサゴ”の名を持つこの花の原産地は台湾。日本には1924年に鑑賞や切花用として導入され、その後野生化したようです。
近所の道端にそこだけ唐突に生えているのを見ると、車両について来たようです。そう思ってみると幹線道路沿いや法面でよく見かけます。関東では成田空港からの路脇で毎年夏に花をさかせています。

一旦根付くとやはり毎年でて、頼りない風情ですが花の少ない夏の時期に咲くので(他のユリより遅い気がします)、目立つのです。これは単独や数本で固まっているのは見かけますが群生までは目にしておりません。

私見では侵略的というほどではないので庭に植えても良い(真夏に花が咲くのはありがたいですから)と思うのですが、他のユリ同様あの薄い種の飛散にも関わらずとしっかりと広がるので注意が必要です。おそらく予期せぬ場所あちこちに出没することでしょう。
外来種とは
一般に外国から入ってきた種は外来種とか帰化植物と呼ばれています。
そもそも植物の流入というのは目新しいことではなく、実は史前から、稲作の伝来(1.水田の雑草)や麦の伝来(2.畑や里山の雑草)、中国から有用植物として伝来(3.漢方の原料)、などの経緯で日本に入ってきていました。

1.には、イヌタデ、ツルナ、ヨモギ、オヒシバ、メヒシバ、イグサ、チカラシバ、エノコログサなどがあり、2.には、ウシハコベ、スベリヒユ、ナズナ、タガラシ、ミヤコグサ、カタバミ、オオバコ、ジシバリ、スズメノテッポウ、カラスムギ、ツユクサなど、3.には、ヒガンバナ、シャガ、ヤブカンゾウ、フジバカマ、ミツマタなどがあります。

例えばオシロイバナやセキチク、ツルムラサキ、シュウカイドウなども江戸時代に伝来した外来種です。このころには観賞用や食用という目的でも植物が入ってくるようになりました。
そして「人や動物・物の移動あれば植物の種の移動あり。」というのは昔から続いています。が、今そこで問題が起きています。
侵略性外来種
植物の地域や国を越えた移動(国の内外を問わず、本来の自然分布範囲を越えた移動)は、時に問題を引き起こします。それは、自生種が生息する地の消失や遺伝子の攪乱、自生種との浸透性交雑などを生じさせ、地域の生物多様性を脅かすことがあります。特に降水量が多い地域ではより深刻になるので、日本もその可能性が十分あります。

例えば、タンポポはもっとも身近な外来種です。幼いころに、セイヨウタンポポという外来種と在来種のニホンタンポポの違いは、がくが反り返ってるか否かだと聞いた時に、しばらく目にするタンポポを片端から識別したことがありますが、当時でもそのほとんどが外来種ばかりで驚いたことがあります。
外来種が在来種を駆逐すると言われたのもこのころで、確かにセイヨウタンポポは根の切れ端からも再生し受粉なしで生殖するほど繁殖力が高く、在来種よりも過酷な環境に耐えるので、普通なら植物など生えないような道端などに目立ちますが、総じると在来のタンポポを駆逐したと言えるのか?は最近の説でははっきりしないようです。総じて侵略性外来種が在来種を脅かすのは事実ですが駆逐の事実はまだまだつかめていません。
ある植物が移入から定着し繁茂するメカニズムというのは解明されていません。北米原産のセイタカアワダチソウが有名になったのは、地下茎から他の植物の害になる物質を出して他を弱らせて急速に繁茂したからで、一時期の空地は、どこもかしこもセイタカワダチソウでした。
同様のメカニズムはセイヨウタンポポにも見られるため、侵略性外来種の多くは異なる土地での生存のためにこのようなメカニズムを身につけたと考えられています。セイタカアワダチソウは、最近では自分の分泌物が自身を攻撃するようになりその数は減っていると聞きます。

種の移動には介在者が必要で、それには飼料混入・貿易などの輸入製品に混入・海外旅行・愛好家による持ち込みなどが考えられます。そう思って良く見ると、外来性の雑草は空港や港湾からの幹線道路を経て、各地域の道路沿いで繁茂していることがわかります。とはいえ移入したすべての外来種が脅威となるわけではありません。既存の農薬が効かないなどの逆接的選択の結果、増殖していったと考えられます。
輸入大国日本。まだまだ新しい種はこっそりと!入ってきそうです。
何が問題なのか
日本に入ってきたすべての外来種が侵略的になるわけではありません。日本は湿潤温暖気候、蒸し暑い夏を持っています。技術革新のおかげで大切に栽培されて出荷されても、この元々の気候に適さなければあまり広がらないですし、多くの種は絶妙なバランスで生態系を作っています。しかし、中には侵略的に繁茂する種も出てくるのです。
日本政府は2年前に外来生物法を施行し、特定外来生物と定めた種類の飼養、栽培、保管、運搬、輸入等を禁止しました。植物のうち現在禁止されているのは下の表のとおりです。試しに見てください。オオキンケイギクがダメと知っていた人はどのくらいいるでしょうか?今でもあちこちで見られるオオキンケイギク、指定対象です。正論では駆除しろということになります。

特定外来生物 未判定
外来生物
種類名証明書の添付が必要な生物
キク
Compositae
コレオプスィス
(ハルシャギク)
Coreopsis
オオキンケイギク
(C. lanceolata)
なし ハルシャギク属の全種
ギュムノコロニス
(ミズヒマワリ)
Gymnocoronis
ミズヒマワリ
(G. spilanthoides)
なし ミズヒマワリ属の全種
ルドベキア
(オオハンゴンソウ)
Rudbeckia
オオハンゴンソウ
(R. laciniata)
なし オオハンゴンソウ属の全種
セネキオ
(キオン(サワギク))
Senecio
ナルトサワギク
(S. madagascariensis)
なし キオン属の全種
ゴマノハグサ
Scrophulariaceae
ヴェロニカ
(クワガタソウ)
Veronica
オオカワヂシャ
(V. anagallis-aquatica)
なし クワガタソウ属の全種
ヒユ
Amaranthaceae
アルテルナンテラ
(ツルノゲイトウ)
Alternanthera
ナガエツルノゲイトウ
(A. philoxeroides)
なし ツルノゲイトウ属の全種
セリ
Apiaceae
ヒュドロコティレ
(チドメグサ)
Hydrocotyle
ブラジルチドメグサ
(H. ranunculoides)
H. bonariensis
H. umbellata
チドメグサ属の全種
ウリ
Cucurbitaceae
スィキュオス
(アレチウリ)
Sicyos
アレチウリ
(S. angulatus)
なし アレチウリ属の全種
アリノトウグサ
Haloragaceae
ミュリオフュルルム
(フサモ)
Myriophyllum
オオフサモ
(M. aquaticum)
なし フサモ属の全種
イネ
Poaceae
スパルティナ
Spartina
スパルティナ・アングリカ
(S. anglica)
なし Spartina属の全種
サトイモ
Araceae
ピスティア
(ボタンウキクサ)
Pistia
ボタンウキクサ
(P. stratiotes)
なし ボタンウキクサ
アカウキクサ
Azollaceae
アゾルラ
(アカウキクサ)
Azolla
アゾラ・クリスタータ
(A. cristata)
なし アカウキクサ属の全種

さらに、現在の環境省の要注意リスト(特定外来生物には指定しないが注意が必要)には、ハルジオンなどの昔なじみの雑草の類いとキショウブ、ランタナ、ハリエンジュ、トウネズミモチ、チョウセンアサガオ属などが挙げられていて、防除の対象となりつつあります。興味があれば環境省のページより参照ください。前者の雑草は除去に重きが置かれているようです。しかし根こそぎ廃絶という思想には、たとえその実現性が限り無く低くとも、首をかしげてしまいます。
さてここで、侵略性外来種の現在問題と将来的問題の一例を挙げたいと思います。

【ハリエンジュ】
ハリエンジュ ハリエンジュは北米原産で、別名ニセアカシアとも呼ばれるマメ科の高木です。花が美しく、蜜原植物や木材として利用され、刺の少ない品種は街路樹として広く植えられています。
元々は明治10年に導入されたもので、当時は、砂防林、海浜の肥料木(マメ科なので窒素固定を行う)などの水源地林荒廃の対策として植林されていました。救国の樹種とまで呼ばれたそうです。今では各地に野生化し、特に河川流域で増殖しています。これに困る地域が沢山でています。

そこで例えば、天竜川流域の工事を司る天竜川上流河川事務所は、平成16年より自らが施工する公共工事においては帰化植物を使用しないという宣言をだしました。生物多様性を守る取り組みを始めています。この流域では現在、約190の帰化植物が確認されているのですが、中でもハリエンジュの駆除には手を焼いているそうです。
ハリエンジュは、トゲがあり、種子や幹だけでなく地中にわずかに残された根からも萌芽するほどの強い繁殖力を持っていて、 群生し自生種を駆逐し、それ主体の特殊な群落を作ってしまいます。各地でハリエンジュの根絶法は問題になっていますが、中にはもっと根本の問題<ハリエンジュの風景が地域の風景であり、花も咲いて綺麗なのに何故根絶しなければならないのか>という意見があるそうです(多摩川永田地区でのアンケートなど)。
園芸的にも人気のあるハリエンジュですが、一度植えたことのある人はこの木のやっかいさがお分かりになると思います。けれども一般には、生態系保全に対する統一見解を作るのは難しいのが現実です。
外来性牧草
イネの伝来に伴って雑草がごまんと伝来してきたように、今問題なのは外来性の牧草種子で、これは家畜の輸入飼料に混入している疑いがもたれています。家畜の糞尿を堆肥として完熟させれば、その過程で出る熱で種子は死滅するのですが、糞尿のままあるいは未熟な堆肥を牧草地や田畑、圃場にまくことで、混入した種が広く移入していきます。
この結果、牧草地が荒れたり穀物畑で競合による作物高の低下が起きるだけでなく、新たなイネ科雑草の花粉症という悩みも増やす可能性があります。
侵略性外来種と庭
こうなると実は道端で楽しめる侵略性外来種でも注意が必要なわけですが、某かの理由で侵略性植物を庭やコンテナに植える際には、単独で、そのスペースを舗装や障壁で囲み封じ込めるようにします。ミントやアイビーなどは以前からこうした方法がとられていますね。
これで問題が抜本的に解決するわけではありませんが、少なくとも近くの他の種に直接影響を及ぼしたり、鳥や人間などの媒体を介して起こる広く遠くへの移動の危険性を減らすことができます。一番良いのはできるだけ栽培しないことですがこれも難しいところです。

どの種がどれくらい侵略的かを掴むのは難しいです。本来生息している地域では問題とならないのに、他の地域では他を圧倒する程の侵略性を見せる植物があります。特に、乾燥に耐える植物の中には強健な種が多くあります。緑化者の立場から言えば、そうした種は屋上緑化に適しており、その使い勝手は良いのですが、それが栽培環境から逃れて野生化してしまうと他の植物を駆逐する可能性がでてきます。(すべての屋上緑化植物が侵略的という意味ではありません。)

植物の品種改良が進み、輸送手段もあり、栽培技術も進んだ社会で、世界中の最新園芸品種を手に入れることが可能な世の中です。新品種や珍しい品種を試してみたいという気持は誰にも否定できません。ですが、新しい植物の購入時には、これはという気がしたら、時に専門家に尋ねたり、調べ物をすることをお勧めします。

古くはイネの伝来当時から始まる外来種とのおつきあい。試しに手許の『日本帰化植物写真図鑑』(全国農村教育協会)をめくったら、あれもこれも道端で目にするものは帰化植物ばかりです。
何がよくて何がだめなのか。その線引きは難しいのですが、せめて外来種や侵略性について現時点で分かるだけの情報を持っている者が開示すべきなのではないかと思います。
豊な時代ですが、個人の物以外では、好きだけではすまされない決定基準が必要な時代でもあります。およそ環境でも、やれCO2の排出量がどうだ、環境負荷がどうだ、と実利の追求が始まっています。緑の設計者としては考慮すべきと思いながらも、趣味のガーデニングまで堅苦しくはさせたくないといつも感じています。しかし・・・春のナガミヒナゲシは、野放図にはいられない環境保全の線引きを私に突きつけるもなのです。

バックナンバー
参考文献:
『外来種ハンドブック』 日本生態学会編 地人書館
『日本帰化植物写真図鑑』
 清水矩宏/森田弘彦/廣田伸七 編・著 全国農村教育協会

監修:小出 兼久
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会
URL:http://xeriscape-jp.org
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