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第58回 ちょっとしたデザインの話 バックナンバー
庭や園芸について語っていると、一年に何度か庭のデザインについての話をしたくなることがあります。
私は以前私塾でデザインについて教えてきましたが、デザインというと最初はなぜか後込みしてしまう方が多いようです。
デザインは本来、何も特別なことではありませんし、難しいものでもありません。ただいくつかの原則を知って、それを元に庭の構成を整理し、区別し、関連づければよいのです。今回はそうした原則の中から実行し易いものを単独で紹介します。
イメージ
庭はミステリー
photo
(c)ワイズスケープ
私は、庭にはミステリーが必要だと考えます。サプライズと言ってもいいでしょう。これがどういう意味なのか疑問に思われる方もいるでしょうが、つまりこれは、この先には何があるのかな?と期待させる庭のデザインと言い換えることもできます。私たちは一般に、180度見渡せる、一目で何があるのかわかる空間よりも、先の見えない曲がりくねった小径や生垣で仕切られた空間、フェンスの間を縫って続く小径…などに心惹かれるようです。『秘密の花園』という古典的名著がありますが、閉ざされた空間に広がる花園という設定は、まさしく大人にも子供にも、そしていつの時代にも大変魅力的なものではないでしょうか。この先(中)には何があるのだろうという期待感を胸に、何か新しい経験を積みたい。そんな私たちを導いてくれる庭を作るーそれが緑のデザインのひとつの基本であります。

photoまたは、幾つかの部屋があるように庭をデザインする…という方法を耳にしたことのある人はいませんか。それも同じことです。私たちは、大広間にばかりいたのでは飽きてしまうし、実際的な用も足せません。色々な部屋を渡り歩き、変化を楽しみ、時に仕事をする。それは庭でも同じことなのです。

しかし、何か立派な道具だてがないとミステリーはできないのではないかと思い込んではいないでしょうか?そんなことはありません。例えば、ススキひとつ、大きく育ったアジサイひとつあるだけで、神秘的な演出は十分に可能です。
アーチの役割
photo バラの絡まるアーチやアーチ付門扉に憧れる人も多いかと思います。
バラの咲くこの時期には特に、魅力的に感じることでしょう。

アーチや門扉は、一つあるとそれだけで雰囲気がずいぶん変わるので、庭の雰囲気を大幅にアップグレードしたい時にはうってつけのアイテムと言えます。ところで、そもそもアーチや門扉は、何のために置くのでしょうか。それは、境界をしっかりと表すために置きます。一般に、門扉はフェンスと共に私有地の境界に建てますね。つまりは、ここから先は「私の土地ですよ」という意思表示なのですが、例えば、庭を幾つかの部屋に分けるとして、その境界に門扉やアーチを置くことができます。ここでのアーチや門扉は、「これをくぐると今までと違う世界に行きますよ」とか「別世界にご案内しますよ」という境界表示プラス案内人の役目を果たしており、私たちはそこを通る度にそれを無意識に感じとります。

ですからもちろん、屋上やベランダなどの狭い空間でも、デザインの仕方で入り口にアーチやミニの門扉を付けると「ここから先は別世界」という意思表示のある、ちょっと畏まった空間になるのです。
コンテナ(鉢)の役割
季節の草花を手軽に楽しむことができるコンテナ。
庭があってもなくても、鉢植えの1つくらいはどこの家庭にもあるのではないでしょうか。1つならばいいのですが、油断するとコンテナも置き場所を求めて収拾がつかなくなります。photo私などは、毎年秋から夏にかけてあれもこれもと苗を買い求めがちで、さらに宿根草を大事にしているため、ともすると鉢が多くなりすぎて雑然とさせてしまいがちです。
コンテナというのはそもそも、熱帯の植物などのご当地産以外の特別な植物を楽しむためのものですから、「楽しみ」のために使うことは、それはそれで良いのですが、もし、空間デザインをあか抜けさせたいのならば、全体の構図にコンテナを上手く当てはめる必要があります。例えば、次の2つの例のように用います。

右の写真は、同じ色同じ形のコンテナを規則的に配置して、 空間にリズム感、統一感を感じさせつつ、さらに玄関まで招くという元々の動線を増強しています。色々な花を植えたくなる気持ちをぐっとこらえて、このように単色で造形的なモチーフを使うと、都会的でお洒落な空間ができあがります。一般に花色が多くなるほど、空間の印象は、牧歌的田園的なものへと変わります。

photo左の写真は、フォーカルポイントとしてコンテナを用いた例です。 わりとお馴染みの風景かもしれませんが、自分で同じことを再現することを旨に、今一度詳しく見て下さい。コンテナをただ置けばそれでフォーカルポイントになるわけではありません。動線の工夫、左右の視界を引き絞り一点に集中させるデザインが、舗装や植物、フェンスなどからできています。こうした舞台をととのえてから、画竜点睛という意味でコンテナを置くと、フォーカルポイントのある空間が完成します。これは敷地が狭い場合でも、工夫次第で作ることができます。遠くの物は小さく見え、近くの物は大きく見えるという遠近法をわざと作ってしまうのです。すなわち、道幅を手前は広く奥に行くほど狭くします。同じ種類の木でも手前は大きい物を、奥に行くほど小さい物を植えるようにするのです。
奥行きのある空間づくり
photo色は私たちに様々な信号を送っているので、上手く使うと視覚的に多くの効果を与えてくれます。
例えば、奥行きのある空間を作りたい時には、青緑や黄、黄緑といった同じ色の濃淡を組み合わせます。一般に物体は、光があたるとその影ができますが、 影があるからその物体は立体に見えるとも言えます。そして明るい色は出っ張って見え、暗い色は窪んで見えます。明るい緑の葉は、その周囲を明るく感じさせるだけでなく、真っ先に目に入り、暗い色の葉はそこに影を感じさせます。そのコントラストは、単調な調子で緑が続くよりも空間に深みを与えてくれます。

以上のような事柄はデザインというよりも、ちょっとした工夫と言えるかもしれません。ですが、こうした配慮の積み重ねがデザインとなり、機能的にも視覚的にも心地よい空間を生み出すことになります。

バックナンバー
参考文献:
『外来種ハンドブック』 日本生態学会編 地人書館
『日本帰化植物写真図鑑』
 清水矩宏/森田弘彦/廣田伸七 編・著 全国農村教育協会

監修:小出 兼久
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会
URL:http://xeriscape-jp.org
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