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最近、多くの虫や鳥、生物を目にします。
羽虫のような小さなものは言うに及ばず、初春からついこの頃まで、どこからともなく出てくるカメムシとテントウムシの多さに閉口しました。
・・・というのも、東京から離れ、地方に移転したためで、「都会には虫がいなかったのだ」ということをつくづく実感しています。
今回はそんな田舎暮らしの実体験より、自然に暮らす生態系について考えてみたいと思います。
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とにかく、机の上、壁、台所、階段など灯りのあるところを、カメムシなどが闊歩しているので、まだ寒いというのにこちらの虫は元気だなあと不思議に思っていた処、ある時、窓の上のさんに沢山ついているのを発見しました。どうやら、隙間だらけの無人家屋は侵入しやすく、格好の冬越し場であった様子。ストーブで室内が暖まったので、のこのこと動き出して来たようでした。
それからも、夜には蛾やジガバチ、ガガンボが、灯りの側で蹲っていたり、それを狙いにクモが来たり、日中開け放しの窓からハエが入ってきたり、いつでもどこでも虫を目にします。虫以外の生物ももちろんいて、夜には閉め忘れた窓の外から、
カエルの大合唱が聞こえてきて煩いほどですし、早朝にはうぐいすやかっこうが鳴きます。そして、軒下にはツバメが巣を作っています。
さらに、いいことばかりとは限りません。山からは猿が降りてきて、ネギの白いとこまで掘って食べてしまうそうで、時には熊が出るそうです。
ここでは、これが当たり前の光景なのだと実感しつつ、それにしても、都心でも緑の深い場所に住み、鳥のさえずりを聞き、時に、緑化の現場に立ち会っていたのに、今を思えば、虫や鳥にはほとんど出くわさなかったとしみじみ思うのでした。 |
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緑化の仕事をしていて、講演か何かの時に出た質問だったと思うのですが、「虫の付かない木が欲しい」と言われたことがあります。その口調が、「花は欲しいけど(100%)虫はダメ(0%)」という確固たるものであったので、こちらも「造花でも飾っておいたらどうですか」とむげもなく答えた覚えがあります。
また、ある時には、植栽の管理を行っていた現場から「木に虫が沢山発生して、気持ち悪いからどうにかしてくれ」と泣きの連絡があり、スタッフが駆けつけて見ると、モミジの若芽にアブラムシが付いてそこにアリが集っていただけということがありました。それに誰も触れないのです。(これは春にはありがちな光景で、葉が生長するといなくなってしまいます。その時は簡単に消毒をして帰ってこさせました。)
かくも都会の人々は、日頃虫に耐性がありません。蝶などの例外を除けば、まるで無菌室にでもいるかのような状態を当然のように要求します。花の時期には持てはやす桜も、葉桜の時期になるとケムシやら、日陰やら、落ち葉掃除嫌さのために、あえなく伐採されてしまいます。自分たちと都合のいい花々以外は存在しないとでも考えているようです。日常的に虫に接しないことも、よけいにその傾向を助長していると言えます。
こちらに越したばかりの頃は、本当に驚きました。「自然が丸ごとある」という実感を、どう書いたら分かってもらえるのか。自然は美というだけではなく、時に、人間にとっての驚異でもあります。都会では多少行き過ぎの感のある「自然脅威論」が、やはり田舎でも同様にあり、それは、日常的に言えば、雑草が生えると田圃は困るし、木々が大きく茂れば暗くて邪魔といったことなのですが、豊かな自然というのは一筋縄ではいかないなと、思ったものです。
ある大工さんが言うには、最近では田舎でも虫がめっきり少なくなったそうです。昔は屋外で弁当を広げていると、どこからともなくハエが寄ってきたのに、今ではほとんどそれもないとのこと。除草剤や殺菌剤のせいで、ずいぶんと虫が減ったそうです。
このように、自分の都合で自然を支配するのが、どこにいても人間のすることならば、自然保護や環境保全は本来、それを認めるところから話を始めるべきことではないでしょうか。
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さて、前置きが長くなりましたが、この経験をもとに振り返ると、「緑を植える」というのはただそれだけの(字面の)行為ではないのだと分かります。それは何か、その空間の生態系に手を加えるということなのです。日常よくあるのは、何か限定的な目的のために木や植物を選ぶということで、特に都心では、狭いところに向く樹種とか、大気汚染に強い樹種とか、手間がかからない樹種という基準での選択が多くなりがちです。個人では、好きだからという理由が1番でしょう。それで、選んで植えて安心し、時に管理し、さあお終い、と済ませるのが一般で、「その木を植えて何が変わったか」に思いを馳せることはなかなかありません。
1本の木を植えることで、生態系は変わるのでしょうか。
答えは、変わります。分かりやすい例を挙げましょう。日なたの大地に、木を1本植えたとします。するとその下に陰ができます。つまり、今までは日なたであった環境が日なたと日陰になり、日陰の植物が生育できるようになります。土壌も保水性が増すこととなり、微生物の生存環境も変わるでしょう。全体として植物の種類が増えれば、それに対応して、虫や鳥も増えるでしょう。そう考えると、たった1本の木が創り出す生物の多様性というのは、すごいものではありませんか。始まりは木1本です。そして、木も草も土も風も虫も鳥も・・すべて1つの空間を構成する要素であり、どれか1つだけでは存在しえないのです。
植物選択の基準として、生態系を豊かにするために価値のある木か否か、という新しい物差しがあります。この物差しで測ると、カシやベニカエデなどの価値は高いのですが、ケヤキはあまり価値がありません。前者は、実や花が食餌になるので、虫や鳥などの小動物が来るのに対し、後者は花も目立たず、他の生物に対する恩恵が少ないからです。「生物多様性」が声高に叫ばれる今の状況ならば、この物差しこそ大いに目安とすべきものではないでしょうか。それは、虫や鳥やその他の生物と自分たちが、同じ地球という土俵にいるのだということを実感させてくれます。
薬剤や開発で自然を否定的に支配して思うとおりにできるのが人間であれば、樹木1本足すことで豊かに積極的に支配できるのも人間です。本来全部ひっくるめての自然は、私たちに困難も不便も強いています。その一員として生きるのは、理想であっても、本当の意味では難しい。緑と暮らす。その語感の良さに酔いつつも、共に暮らすのは「緑」だけではない、虫や鳥なども含む生態系そのものです。それこそが「自然」なのだと思います。
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