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庭を訪れる生き物たちの中で最も歓迎されるもの−それは、蝶ではないかと思います。もっとも、これは国を問わずに共通する意識のようで、アメリカやヨーロッパでも、「蝶やハミングバードを魅了する植物」というテーマの園芸講座は、毎回多くの参加者で込み合っています。さらに、近隣の書店やガーデンセンターに行けば、関連する書籍や資料を容易に手にすることもできます。
人は、蝶の自由気ままに飛んでいるような優美な姿に憧れるということでしょうか。
「そういえば最近蝶なんて見ないなあ」という方もいるでしょう。子供の頃は、もっと身近に蝶がいた気がするのに、今いないのは、何故なのか。
探す時間的余裕がないのも確かですが、蝶の数が減っているのも間違いのないことです。とはいえ、まだまだ都会でも、適切な植物を選ぶことで、蝶をそこに呼び、目にすることができるようになります。
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蝶を呼ぼうとする時に必要な植物は、大きく分けて2種類あります。一つは、蝶の幼虫であるイモムシ類の餌となる植物(食餌植物)であり、もう一つは成虫である蝶自身のための植物(花蜜植物)です。次の表に一例をあげたので参考にしてください。
| <花蜜植物の例> |
| 草花 |
アガパンサス、アスター、アルメリア、オダマキ、オレガノ、コスモス、サルビア、スイトピー、スイートアリッサム、セントランサス・ルブラ、ナデシコ、ノコギリソウ、バーベナ、ハルシャギク、モナルダなど |
| 低木 |
アブチロン、アベリア、シモツケ、スイカズラ、スグリ、ツツジ、チョイシア、バイカウツギ、ヒイラギナンテン、ブッドレア、ヘーベ、ライラック、ラベンダー、ランタナ、ローズマリーなど |
| 高木 |
カエデ、リンゴ類、柑橘類、トチノキ、ヤナギなど |
   
| <食餌植物の例> |
| アゲハチョウ |
サンショウやミカンなどの柑橘類、パセリやフェンネルなどのセリ科植物 |
| アカタテハ |
カラムシ、クサマオなどのイラクサ科野草、ホップ、ケヤキ |
| ルリタテハ |
ホトトギス、サルトリイバラ、シオデ |
| キチョウ |
ネムノキ、クサネム、メドハギ、ハギ、ニセアカシアなどマメ科植物 |
| モンシロチョウ |
アブラナ、キャベツ、ブロッコリーなどのアブラナ科植物 |
| ルリシジミ |
フジ、ハギ、エンジュ、クララなどマメ科植物 |
| ベイシジミ |
スイバやギシギシ(野草、中でもいわゆる雑草) |
  
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花蜜植物の中からもし一つだけ選ぶとすれば、ブッドレアでしょう。理由は分かりませんが、生育可能な地域ならば、この木は蝶に最も効果的な花木です。私の事務所にもあり、英名であるBUTTERFLY BUSH(バタフライ・ブッシュ:蝶の潅木)の名のとおり、花の時期にはどこからともなく、アゲハチョウがよくやって来ていました。ちなみに、引越で東京から長野へと持ってきましたが、今のところ新しい環境でも新芽を出しています。
皆さんが通常入手できる株は、小さいものが多いですが、生長が速いのですぐ大きくなってしまいますし、また、耐寒性も比較的ある丈夫な潅木です。大きくなりすぎて嫌だなと思ったら、遠慮なく切りつめるといいでしょう。ベランダには向きませんが、スペースがあるならばおすすめです。その年に新しく出た枝先に花穂をつけ、次から次へと咲くので花の時期が長く、蝶も長くやって来ます。
それよりも手軽に始められるのは、ラベンダーやローズマリー、オレガノ、サルビアなどのハーブ類でしょう。一般に葉に芳香があり香油が生成できるものをハーブと呼んでいますが、花に香りのあるものが多いからか、蝶がよくやってきます。中でもモナルダは有名です。
丈夫で育てやすいものが多いので、表に書いたもの以外でもハーブはお勧めですが、いずれも欠点は湿度に弱いところと野放図に育つところでしょうか。あと、セントランサス・ルブラもおすすめです。
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蝶を呼ぶための手段として花蜜植物は手軽であり、美観もよいので試みやすいものです。一方で、食餌植物の栽培は敬遠されがちです。これには、食餌植物には、食用を第一とするものが多いことや、逆に、雑草や野草も多くてこれらは栽培が困難なこと、美観的に貢献しないこと、などの理由があります。
また、蝶は好きだけどイモムシは嫌いという理由も十分にありえます。しかし、生態系保全の立場で言えば、ある生物を維持するのに最も役立つのは、その食餌を確保することで、言い換えると、蝶が卵を生み幼虫が餌を食べて育つ環境を整備し、増やすことこそが、その個体の数を増やす有効な方法なのです。
本当は、地域の蝶は地域の雑草や野草と結びつき生まれてきたものでしたが、開発が進んだ今、その関係は崩れつつあります。ならば、それを取り戻せということで、例えば、昔は学校に自然園というのがありましたが、こういう場所を利用して、学校でこそ色々な虫を雑草と共に育ててもいいと思います。イモムシやケムシを見たことがない子供もいると聞きます。そうした子供たちに、イモムシから蝶への生態を見せることは、得難い経験となることでしょう。自分たちで世話をしたのならば、なおさらです。 |
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さて、植物を選んだら、その後の管理にも気をつける必要があります。簡単なことですが、いずれの植物にも、その管理に農薬を使わないということです。今のところ、ある特定の害虫だけに作用するような薬剤はないため、どのような殺虫剤であっても、蝶や他の生物にも影響を及ぼすことになります。
花が咲く植物はすべて蜜を作り、それで虫やクモにタンパク質を供給します。ということは、やってくる生物は、蝶だけに限られないということであり、花蜜植物は、特に蝶を惹きつける種類ですが、蝶だけでなくハチにとっても魅力的で、それをあてにクモも来たりと、他の生物が来る可能性は十分にあります。このため、散策する時や小さな子がいる時には、注意が必要です。
私たちは、自然界で、蝶を特にと強調はできても、蝶だけ欲しいという、ムシのいい選択はできません。オール、オア、ナッシング。オールは生態系の豊かさであり、ナッシングの意味するところは『沈黙の春』でしょう。生物がつながりあって暮らしている空間こそが緑の空間であり、緑化やガーデニングは、生態系を豊かにするものでこそあれ、それを偏向させたり、断絶させるものではないのです。
花蜜植物や食餌植物を植えて、蝶がやって来るのを目にすると、緑化や園芸には大変なパワーがあるのだと感じます。それは、両者が人を楽しませるためだけにあるのではない、という証明でもありますね。 |
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もし空間に余裕があるのであれば、適当な植物を植えること以外に、次のような環境を整えると、蝶がより留まりやすくなります。
まず風から保護された場所であること、多くは日当たりのよい草原のような作りがいいのですが、できればその敷地には、岩のある場所や茂みなどのシェルターとして使えるところや、水たまりまたは湿った場所があるとより効果的です。岩の割れ目や陰に留まったり、水を飲むものもいるためです。 |
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生態系を豊かにすることをテーマに今の都市の植栽を振り返ると、なかなか満足のできない現状があります。もし誰かが、「蝶を呼ぼう・増やそう」という目的を持って、花いっぱい運動であるとか街路や広場の植栽を選ぶことを始めれば、都市の自然も真に豊かになる可能性があります。あなたの駅の近くで蝶が舞うことが当たり前・・・なんていうこともそう遠い日ではないかもしれません。 |
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