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“緑のある暮らし”フォーラム
第61回 実用的な対策〜緑は温暖化の救世主〜 バックナンバー
 夏休みも終わり暦も変わろうという時期、 皆さんの地域では過ごしやすい気候になってきていますか?
 筆者在住の長野では朝晩が涼しくなり、時に半袖では肌寒く、日中も初秋の気配が漂っています。しかし、東京ではまだまだ暑いですね。もちろん8月中旬のあの殺人的な暑さには及びませんが、こうして夏の尾を長く引っ張りながら、ある日突然思い切り秋を感じるのが関東の気候なのかなと思います。季節の変わり方というのは、地域によって違うものです。

イメージ
今年の夏は猛暑?
 今年の夏はもともと「猛暑」の予想でした。
これは春先にラ・ニーニャ現象が見られたためで、ラ・ニーニャが発生すると猛暑になるという一般的な筋道から立てられた予想だったのですが、6月に梅雨に入ると以外と低温で、また、梅雨もなかなか空けず、気象庁は梅雨さなかの7月下旬に、今年の夏は「平年並みの暑さ」と下方修正をしました。
しかし、8月に梅雨が明けると連日連夜どこそこで○度と、人間の体温以上の気温があちこちで観測されるようになり、中でも16日の最高気温は、岐阜と熊谷で観測史上、最高の40度以上になりました。

気温が体温以上とは、ひと昔前まではありえないこと、まして、暑さが原因で人が死ぬなんて考えもつかないことです。
私もこの時期、新宿新都心を歩いていましたが、沢山の室外機から放出される熱やアスファルト・コンクリートの照り返しなどで、観測以上の暑さを体感し、連日かなり参りました。なぜわざわざ夏の描写をしたのかというと、皆さんにあの暑さを思い出してもらいたかったからです。
都会にもっと樹木を
 そこでつくづく実感したのは、都会には緑が少ないということです。打ち合わせに急ぐとき、あるいは、買い物帰りの荷物を抱えた帰り道に、大きな木陰ができる並木があればどんなにかいいと思ったのですが、都心では、木陰がなかなか身近にありません。新都心のように比較的新しい場所や公園一帯ならば樹木がありますが、それでも少ない。旧市街地や昔から続く繁華街は、オフィスや雑居ビルが建ち並び、床は舗装され、土と緑の入る場所がないのがほとんどです。確かにここは難しいところだと思います。

しかしまた、郊外、住宅地、通勤圏と呼ばれるあたりでも、木は植えて数年の幼木だったり、あるいは、管理が悪く枯れていたり、成熟しても写真のとおり、強度に剪定された姿のものを見かけます。もちろん全国で一概に断定は出来ないでしょう。しかし皆さんに聞きたいのです。

「今年ほど大きな木陰が欲しいと思った夏は、なかったのではないですか」と。

あなたは
「そうは思わない」と答えますか。
「そのとおり」と答えますか。 あるいは
「そんなものが存在すること自体考えつかなかった」と答えますか。

いずれにせよ、もっとも緑陰の恩恵を被ることのできるこの時期のあなたの答えが、日本人の緑化に対する認識を端的に示すことになるでしょう。
地球温暖化の影響
 2月の本ページでも触れましたが、今年2月に出された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による第4次評価報告書では、地球温暖化は人間の活動が原因であると90〜95%の確率で断定しました。これは大変重要なことですが、今年のように一時でも猛烈な暑さを感じてしまうと、それ以上の前進が欲せられます。

つまり、地球温暖化が人間のせいか否かあるいは、CO2排出の抑制目標が
どうこういうよりも、具体的な抑制対策はあるのかないのか?
あるとすれば、対策はどう進んでいるのか?
というところに関心が移るのです。
具体的な対策が必要
 8月上旬、第1回アジア・太平洋水サミット開催記念シンポジウム「気候変動と水」-を拝聴したおりのことです。 スリランカの方が、大変興味深いことを言っていました。なんでもODAで海水を真水に変える機械が来たそうです。が、ばか高いコストがかか り、金持ちの遊び道具のようなもの。そういうものではなく、雨水をどうやって利用するのか、貯蔵方法は何がいいのか、資材は?コストはどのくらいかかるのか、どういう管理をすれば長持ちするのか・・こういうことをもっと教えて欲しい。私たちが欲しているのは、実用的な技術だと。フランスの方も、温暖化の具体的な対策をたて実行するのをどんどんやらなければだめだという主旨を述べていました。

で、緑化が地球温暖化に、夏の暑さに対抗できることはないかと考えると、一番効果的なのは、大きな木を植えることであります。

木を植える意味
 日本の都会で、大きな木は邪魔者扱いされています。
景観を保全しようという気概のあるところは以前少数。また問題は、景観とか言えないほどの日常的単位の住宅街や駅前、ちょっとした都心です。多くは落葉を掃くのが嫌だから、大きくなると台風で倒壊する恐れがあるからと夏前に剪定し、最近はムクドリの大群の飛来を防ぐために、さらに丸坊主にされてしまいます。

大きな木が1本あるだけで、周囲がどんなに涼しくなるのか。

そんなことを考えもせず、面倒を避けるために強剪定される木。春に芽が出て葉を広げやっと育ったのもつかの間、多くの枝葉が刈り取られ、見苦しく夏の暑さも防げない。
一体なんのために存在するのでしょうか?
市民も、私たち専門家も、行政も、今一度このことを考えてみる必要があります。

「なんのために木を植えるのか」
「その木はどのくらい大きくなるのか」

それが分からないのであれば、あるいは、分かっても守られないのであれば、都市に木を植えても仕方がないのです。
いっそ都市の樹木はなしとすべきです。

暑い夏の盛りに、私は思います。青山の欅並木、府中や国立の桜のトンネル…こうした場所がもっと増えるならば、日本の都会はもっと快適になるのではないでしょうか。困難は百も承知であるけれども、酷暑を体験した今だからこそ、都市の緑に対して再考を促したい。木はできるだけ自然樹形を保ち、大きく育てる…それは不可能な望みでしょうか。
植栽基準が密すぎるのなら現状にあわせた改訂が必要です。また、もちろん樹木には倒壊や電線に対するリスクもあります。狭い場所には無理などの欠点もあります。それでも、恒常的にもたらされる恩恵を考えたら、例えば「打ち水大作戦」を推進するよりも意義のあることと思います。喉元過ぎれば・・という格言でなく、真の環境行政が今求められていると思います。

地球温暖化は、今後も私たちの生活のあらゆるシーンに影響を与え続けるでしょう。その対策を真剣に実行すべきは今。一刻の猶予もないこの時期に、緑化から対策を実行するーそれは、温暖化防止だけでなく快適で美しい生活をも私たちにプレゼントしてくれるのではないでしょうか。

バックナンバー
監修:小出 兼久
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会
URL:http://xeriscape-jp.org
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