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第63回 秋植え球根 バックナンバー
 秋も深まり、木々の葉が色づく時期を迎えています。しかし最近は、地域ごとの気候差が激しく、暑さがなかなか収まらないところがあるかと思えば、例年より早い初雪の便りが届いた地域もあります。これも温暖化の影響なのでしょうか。外気を肌で感じ土に触っていると、なかなかガーデニングの教科書どおりにはいかないなと思います。一番頼りになるのは自分の感覚だというのが、日々自然の変化を知るガーデナーの実感ではないでしょうか。さて、今回は、秋植え球根についてお話したいと思います。 イメージ
植え付け時期
 秋植え球根の多くは今月が適期です。
多くの球根が15度前後で発芽するので、11月の中旬ごろまで植え付けることができます。最近の都市の気候は暖かなので、それ以降でも大丈夫なところもあるでしょう。遅く植えればそれだけ遅く咲くというだけですが、5度以下ではさすがに発芽や生長が停滞しますので、そうなる前に植え付けてください。
また、植え付けは苦手という方は、年明けには発芽苗や花付きの球根鉢が出回り始めるので、鉢物も上手く利用してください。
球根の魅力
秋植えの球根とは、秋に植えて春に咲くもので、チューリップ、スイセン、ムスカリ、ヒヤシンスなど、皆さんご存じのものばかりです。では、その魅力とは何でしょうか?あらためて考えてみたのですが、それは「春を感じさせてくれる」ことに尽きるのではないかと思います。

「フェブラリーゴールド:2月の金」という名のスイセンを例に出してお話しします。黄色のラッパズイセンを小ぶりにしたこの種は、アメリカでは手に入れやすいポピュラーなもので、今の時期のガーデンセンターにはよく並んでいるのですが、初めて手にした時に、そのネーミングの良さに感嘆しました。

イメージ2月の金―
それは、スイセンの中でも比較的早い時期に咲きます。

冬枯れの大地に咲く黄色の花は、冬から春への移り変わりを暗示し、さぞかし輝いてみえるだろうなあと思ったからです。欧米では「庭は黄色に始まって黄色に終わる。」と言われます。これを庭は、黄色の花に始まって秋の紅葉で終わると言い換えてもいいでしょう。この黄色の花はセイヨウセツブンソウで、学名のエランティスは、ギリシア語の春と花を組み合わせ「春に最も早く咲く」という意味を持たせた言葉です。セツブンソウから始まってクロッカスやスイセンなど、確かに春先に咲く花に黄色は多いのです。そして圧倒的に咲き誇るスイセンやチューリップ…英国庭園や風景カレンダーには必ずと言っていいほど登場する一枚ですが、…その風情ほど、人々に春を実感させるものはないのではないでしょうか。ボリュームがあればさらに言うことなし、です。

スイセンやチューリップ(球根)は、パンジーやニチニチソウ(一年草)やミヤコワスレ(宿根草)と比べ、花の咲いている時期が一番短いです。園芸店ではチューリップの鉢花が入荷したら、早く売り切ることに心を砕きます。この、時期を逃したら翌春まで見られないという性質は、まさしく日本におけるサクラに匹敵するのではないかと思います。そして「だからこそ」球根に心ときめくと言えましょう。

私たちが庭の計画をするときには、一般に、いつも緑(綺麗)で変わらない部分のつくりと一方で季節感の演出とに腐心します。
季節季節の趣を何で表現するかということは、デザイナーそれぞれの感覚ですが、この季節感の演出にあたって、球根が一役買ってくれるのは間違いないところです。ただし、花はすぐに終わってしまうので、プロとしては花の無い時期のことや花後の管理についても併せて考えておかなければなりません。また、配置にもよりますが、ボリューム感を出すことも大事です。
ある程度の数をまとめて植えると季節効果が高くなるため、簡単なのは、プランターや鉢に植えて、花後は取り替えるという方法です。このようなプランターを2、3用意すれば、その時々で風景のアクセントを変更することができます。
球根の植え方
基本は、球根の3倍の大きさの間隔で、3倍の深さに植えます。ですが、一般に広めにスペースをとるのは、後の球根の肥大や分球を考えてのことで、それについては日本では風土的に難しい種類があるのと(チューリップ)、その年きりの消耗品という捉え方も多いので、ガイドブックにとらわれず、花と花が隣り合う位にやや密植ぎみにするといいでしょう。見栄えがよくなります。球根の効果はその集団美にあるからです。

浅めの鉢しかない場合は、底から逆算し、球根を表面から1/3〜1/4程度見えるように浅めに植え付けます。これでも開花には十分です。
ただ、多くの球根は花後に新しい球根を元の球根の上に付けます。それができないということだけです。十分なスペースで良く育った球根は、花後、葉が枯れたら掘り上げて乾燥させ、翌秋に植え付けることができます。あるいは、中にはそのまま植え放しにしてもかまわないものもあります。その場合、混んできたり、先細りをするようなら、掘り上げて貯蔵しましょう。植え放しで成績が良いのは、私の経験では、クロッカス、ムスカリ、スイセン(原種系)、バイモ、スノーフレークです。霜の当たらないプランター植えならバビアナも良いです。

野生種・原種
場所のない方や少し変わったものを植えたい方におすすめなのは、原種系の品種と矮性の品種です。原種に近い品種は、改良で生み出された園芸品種よりも丈夫で、環境耐性を持っており、野生の強さと言うか、条件に左右されずに割とよく生育します。
下に、育てやすい球根や原種を幾つか紹介します。
園芸店でも比較的手に入ると思いますが、一番確実なのは通販カタログを利用することです。

イメージ● チューリップ
多くの品種の中から原種系を選ぶのは、少し難しいでしょう。その目安は、まず八重とか華美ではないことで、普通のチューリップをぽてっとした形と形容するならば、原種系はやや精悍な面立ちをしています。ユリ咲きに似ていますが花色にはつるっとした光沢のある朱赤が混じることが多く、丈は低めで30cm前後、葉は幅広で紫褐色の虎斑が入ります。 さらにクリサンサ、タルダ、チューベルゲニアーナといった種類は、もっと小型でロックガーデンや鉢植えに向きます。

イメージ● スイセン
スイセンには一万種を越える品種があり、ラッパ咲きから、八重咲き、房咲き、釣鐘咲きなどのさまざまなタイプがあります。矮性の品種には、ティータティート、ジョンキラ、バルボコデュームなどがありますが、テイータティートは育てやすく、一つの茎に2つの花が対で咲きます。江戸時代に渡来したジョンキラは、イグサの様な細くて筒状の葉を持ち「香りズイセン」の名で親しまれています。これは植え放しでも長持ちし、古くから民家の庭先に何気なく植えられています。バルボコデュームは漏斗状の花が特徴の野生種です。またトリアンドラスという、フクシアの花に似た釣り鐘状に咲くスイセンも、高さ15cmほどですが独特の風情があります。いずれも排水のよい土に球根の3倍の深さに植えます。

イメージ● アネモネ・ブランダ
大きくあでやかな花をイメージするアネモネですが、本種は草丈・花ともに小ぶりで、淡紫か白のキクに似た花を咲かせます。落ち着いてどこか山野草のような趣があります。ほとんどの球根については、事前の準備は不要ですが、アネモネだけは球根が乾燥して収縮しているので、あらかじめ濡れた新聞紙にくるんだり、湿ったバーミキュライトの中に一晩埋めておくといいでしょう。これは急激に水を与えると球根が腐りやすいためです。さらに、植え付けには上下を間違えずに、やや平らの面を上にして2〜3cmの深さに植えます。5号鉢に3球位です。

イメージ●ムスカリ
グレープヒアシンスの別名のとおり、深い青色でヒアシンスやブドウを思わせる小さな花が房になって咲きます。春の陽に清々しい青が映え、好きな方も多いと思います。育てやすい球根で、排水の良い土壌であれば植え放しでも育ち、特に手はかかりません。ただその場合、秋には葉が出始め、花が咲くまでにラーメンのように伸び放題になるので、買ってきたような姿が好みの方は、毎年梅雨前に掘り上げて秋に植え付けをします。

イメージ● エランティス(セイヨウセツブンソウ)
日本のセツブンソウは分かりませんが、本種は植えると普通に芽が出て、育てやすい品種です。植えてから数年間はそのままでかまいません。深さ7cm位で、落葉樹の下にかたまりで植えると、落葉をベッドに早春に可憐な花を咲かせます。

イメージ● バイモ
江戸時代に渡来し、薬草や茶花として育てられて来ました。これが実はフリティラリアの仲間で、フリティラリアというのはいかにもという派手な花なので、その落差に感嘆したものです。日本庭園には植えられても、洋風化した昨今の庭には余り馴染みがありませんでしたが、これが以外と丈夫です。小さな植物なので場所もとらず、半日陰を好み、植え放しで育ちます。

イメージ● 細葉球根アイリス(ミニアイリス)
本種は、アイリス・レティキュラータと呼ばれる種類のダッチアイリスで、草丈10cm程で5cm位の花を2月ごろに付けます。葉はクロッカスのようです。花色は、紫、青、淡青ですが、アイリス・ダンフォルデイアエというやはり小型種で黄色の花が咲くものを一緒に植えると、そのコントラストが美しいです。作り方は、鉢植えで排水のよい土に、球根の3倍の深さに植えます。その年きりと割り切って楽しんでください。

バックナンバー
監修:小出 兼久
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会
URL:http://xeriscape-jp.org
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