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第67回 桃について バックナンバー
 暖かさと寒さが一進一退を繰り返す日々が続いています。今の時期は、冬と春とが土俵の上で相撲をとり続けているようで、今日は春が勝ったけど明日は冬といったふうに、最終的に春が勝つのは分かっていても、まだしばらくは勝負つかずという時期であります。しかし、それでも少しずつ春がやってきているという予感も感じさせます。もうすぐ桃の節句、雛祭りです。女の子のお祭りとして、お雛様を飾り、桃花を飾り、白酒を飲み、無病息災や健やかな成長を願う。雛祭りは、まさに最初の春の行事という感があるのですが、現代の私たちが体験できるそれは、正確には「即席の春」となっているのが、残念でもあります。
イメージ
桃の節句の由来
イメージ 雛祭りは別名、桃の節句と言われます。
これは、この3月3日のお祭りに、季節の花である桃の花枝を添えることからそう呼ばれています。昔は、桃はまさしく春の花であり、桜ももちろんですが、桃も負けないくらい愛でられたのではないかと想像できます。なぜならば、こうした行事は旧暦を元にしており、旧暦の3月3日といえば、今の3月下旬から4月上旬のまさに桃の咲く時期でありました。そして、今でこそ私たちは、桃というとその果実を連想しますが、果実を主目的とする栽培は、実際には明治以降に品種改良と共に広まったもので、それまでの人々は、桃を花や薬用として利用するために植えていたといいます。『花壇綱目』や『花壇地錦抄』という江戸時代の園芸事典で元禄年間に出されたものには、観賞用の桃の品種が多数掲載されています。花見(桜)ももちろんですが、桃の花見にて季節を感じる。それもさぞかし、見頃であったことでしょう。

そもそも「節句」というのは季節の変わり目のことで、一般に、季節の変わり目には病気にかかりやすい、体調に変調をきたしやすいものです。そこで、植物や食物など季節のものの力をかりて、邪気を払い、無病息災を願うのが、節句の儀式でありました。桃の節句とは、江戸時代に徳川幕府が定めた(以前からあった儀式を認めた)五節句のうちのひとつで、今では女の子のお祭りですが、元々は、災いや邪気を人形に乗せて祓う「人形流し」と中国から伝わった曲水宴などに由来するものであり、その儀式にいつの頃からか花を添えるようになった桃も、古来中国では、長寿の食べ物であり、また、魔除けとして支持されていた植物なので、そもそもこの節句の儀式を飾るには、ぴったりの物だったわけです。今でも雛祭りの際に飾られるのは、魔除けとして邪気を祓う力があると信じられているからで、中国の風習の影響もあったと思われますが、儀式で使う飾り物ひとつにも、美だけでなく実益を込めていたのだという先人の知恵には、今更ながら関心をさせられます。

現在の私たちは、残念ながら旧暦ではなく新暦を基準に生活をしています。そうするとまもなくやってくる3月3日というのは、旧暦ではまだ1?2月なのでまだ寒く、桃の節句に飾る桃の花は、現実には促成栽培された切花で間に合わせるしかありません。本来の行事は季節と共にあったのですから、3月の節句に里では桃の花が先競い、それならばどんなにか、桃と(邪気を祓う)力と私たちの健康だとか未来だとかがハッキリと結びついていることが実感できたことだろうと思いを馳せるのです。新暦ではどうしても、旧暦の行事に対して物を無理に作って形式的に合わせることになりますが、それが私たちから伝統や季節感という拠り所を奪ってしまうのは、仕方がないことですが残念なことです。
桃の種類
それでも桃に注目してみましょう。桃は、元々は中国原産の植物です。といっても、弥生時代には日本に渡来していた、日本での歴史も相当古い植物です。現在も各地で栽培されていますが、明治以前は、主に、厄除け、薬、花木として親しまれていたのが、今と大きな違いです。今は、果実を食用にする食用桃と、花を観賞するハナモモ(花桃)とに大別されます。 どちらの桃も、花の色は一般に桃色ですが、白や濃桃などの品種もあり、変化に富んでいます。実は夏頃に熟し、その種類は、産毛の生えた白桃、産毛のないネクタリンやアブラモモ、黄色の果肉の黄桃、珍しいところでは晩冬があります。

食用桃
イメージ食用桃を植える醍醐味は、なんといってもあの瑞々しい果肉を味わうことに尽きます。私たちが、桃と言われて思い浮かべるそれは白桃でありますが、皆さんは、実はそれは日本で生まれた桃だったということをご存じでしょうか。元々の中国の桃は、先のとがった硬い果実で、日本の高温多湿の気候には適したものではありませんでした。その中で、偶然に発見されたのが「白桃」であり、日本に合ったそして果汁たっぷりの丸々としたこの桃は、優良品種が次々と生まれ、現在では日本で流通する白桃は「白桃」と「白鳳」がほとんどだそうです。白鳳は、白桃から改良された品種で、正確にはこちらのほうが私たちの馴染みの桃と言えるでしょう。あの表皮が赤味がかかる一般的な桃の系統です。山梨、福島などの産地が有名です。白桃というと表皮も白く果肉も白く、岡山、山梨が有名です。

家庭で食用桃を楽しむ場合、こうした桃の産地を参考にして、自分の敷地が桃栽培に適しているか判断する必要があります。桃の産地であればひと安心ですが、そうでなくとも似たような気象条件の土地であれば、栽培が上手くいく可能性が増えることになります。曰く、陽が良く当たること、日照時間が長いこと、土壌は肥沃で排水が良いこと、などの条件を満たす場所が適しています。また、昼夜の寒暖の差が大きいと果実が甘くなります。

次に種類ですが、白桃は本来、自分では花粉を持っていない他家受粉という他の桃の花粉で受粉する性質の木なので、1本植えただけでは実が付きません。とはいえ、一般の桃は、開張性という大きく横に広がる木のため、敷地内にそう何本も植えることは難しいです。そこで、白桃系を植えたいならば、白鳳やあかつきという自家受粉をする品種を選ぶようにしましょう。これならば、1本でも植えることができます。また、一般の種ではたとえ1本でも大きすぎて入らないという狭い敷地には、照手水蜜という枝垂れ桃の品種があります。これは、源平枝垂れの花桃に前述の白鳳を交配して選抜した品種です。花桃系なので春には花が美しく、夏には果実が楽しめる、という一挙両得とも言える品種です。果実はネクタリンやアンズ程の小ぶりなものですが、水蜜というだけあって美味しいです。白鳳系なので1本でも結実し、樹型は枝垂れ性なので大きくならず、また、自然と樹形がまとまります。手間要らずで、家庭果樹には最適な木です。

この他、ネクタリンも庭木として向いています。鉢植えでも花と実の両方が楽しめます。
植える場所は、日当たりが良く、排水の良い場所です。できるだけ大きく植え穴を掘り、直接根にふれない所に堆肥などの有機質肥料を混ぜ込み、植え付けます。地植えの場合、大きくなってきたら剪定します。その際、3m以下にすることを心がけると、扱いやすくて良いでしょう。ネクタリンも1本で受粉するものとそうでないものがあります。やはり手間要らずには、自家受粉をする品種を選ぶようにしましょう。

観賞桃
イメージ観賞用の桃は、花桃と呼ばれています。
花桃は結実することはまれで、また、結実しても美味しくありません。しかし、その花は通常の桃よりも大きく、一重、八重、紅白咲きなどがあります。木の大きさで分けると、大きくなるもの、ほうき状になるもの、矮性のもの、枝垂れのものなどがあり、選ぶ場合には、都市の庭であれば、ほうき状になるものや矮性の品種が適しています。枝垂れの品種もいいでしょう。一般に手に入れやすいのは、ほうき状に枝が直立する花桃で、テルテモモ(照手桃)と呼ばれる種類です。紅、白、桃、薄桃などの花色があり、それぞれ照手紅、照手白、照手桃、照手姫などの品種名で流通します。これらは、成熟すると通常の桃の木より大きく高さ5m程になりますが、枝は横に広がらずに直立し、そのため幅が1mになるのに時間がかかります。高さが出ると言っても時間がかかり、この意味で若木はボリューム感には欠けますが、成熟し枝が密になってくると見事です。横に広がらず、自然と樹形がまとまるので、狭い敷地にも植えることができます。成長は遅く、また、剪定要らずで手間もかかりません。庭には、紅白を植えるとか、数本まとめて植えると見応えがでて、いかにもモモという印象を与えてくれます。1本ならばやはり桃色、濃ピンクがそれらしい印象でいいと思います。

より小さいものが良いとか鉢植えで楽しみたい場合は、矮性種の寿星桃(じゅせいとう)をお勧めします。これは矮性の花桃の種類で、今の時期には、南京桃とかアメンドウ、カラモモの名で鉢物で出回ります。赤葉の品種ならば葉の時期も楽しむことができます。ベランダやテラスでも育てることができますので、お試し下さい。また、株立ち状になるおひよ桃や枝垂れ桃の品種もあります。
桃の植え時
 落葉樹なので新芽が出る前、今が植え時です。
果実利用の場合には、昔から「桃栗3年、柿8年」と言うように、苗木を植えたら、3年は辛抱しましょう。

肥 料
肥沃な土壌が適しているので、肥料は与えたほうが良いです。寒肥として、毎年1月〜2月頃に、木の周囲(葉張り境界あたり:ドリップライン)にぐるりと一周溝を掘るか、放射状に溝を掘り、乾燥鶏ふん、油かす等を混ぜて埋め込んでください。
桃の効果
桃は、木全体に薬用があり、さまざまな利用をされてきました。
長寿と言われる果実は、果物の中でも身体を冷やさないもので、(漢方で身体を冷やさないことはすごく大事なことです)女性にとって良い果物だそうですし、この他いろいろな効果があるようです。種や花は漢方薬ですし、種は着火材としても有用です。そして皮や葉は肌の保水力を高め、アレルギーに効果があるようです。

夏の土用の桃湯
イメージ桃の葉は肌にいいことが昔から知られていました。
特にあせもや皮膚炎予防として用いられていたようです。その方法は桃湯です。江戸時代には夏の土用に桃湯に入り、あせもを防いだそうです。以前のちびまるこちゃんでもお母さんがやっていました。桃の葉を摘み乾燥させて、お風呂に水から浸すように入れると桃湯の出来上がり。桃の葉が沢山手に入る場合には、煎じてその煮汁を風呂水に混ぜるのもよいでしょう。
桃の木のあるご家庭では、今年の夏に試してみてはいかがでしょうか。但し、葉が少なくなると果実の付きに影響するので、食用桃が目的の場合には、葉の利用はほどほどにします。

バックナンバー
監修:小出 兼久
NPO法人 日本ゼリスケープデザイン研究協会
URL:http://xeriscape-jp.org
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